研究課題/領域番号 |
26380848
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研究機関 | 福島学院大学 |
研究代表者 |
内藤 哲雄 福島学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20172249)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 対人コミュニケーション / 異文化間コミュニケーション / 非言語コミュニケーション / コミニュケーション・スキーマ / PAC分析 / 留学生 / 違和感 / 不適応感 |
研究実績の概要 |
異文化間対人コミュニケーションでは、言語が異なるだけでなく、その背後には対人コミュニケーションを進めるためのスキーマ(どのようにあるべきかの方向づけ)そのものに違いがあることが推測され、筆者内藤の従前に受給した科学研究費による研究で、スキーマの違いとこれによる違和感や不適応感が存在することを明らかにしてきた。本科学研究費補助金による課題は、無意識に使用されることの多い非言語対人コミュニケーションにおいても、スキーマが存在し、異文化の相手の非言語対人コミュニケーション行動を出身国の(自身の)スキーマとの対比を通じて解釈し、違和感や不適応感を懐くことを検討することである。筆者がこれまで取り組んできた異文化間対人葛藤や異文化間対人コミュニケーションの場合と同じく、日本人との違いに気づきやすいのは、母国の様式と異なる日本で生活している外国人留学生であろう。そこで彼らを主たる対象としてPAC分析を実施することにより、非言語対人コミュニケーション・スキーマの差異を解明することが本研究の主要目的である。本研究のPAC分析では、①日本人とのコミュニケーションの際に、誤解や葛藤を生じやすい身振りや表情、防衛や対処行動についての連想を引き出す刺激文、②日本人のコミュニケーションでの身振りや仕草、表情などの非言語コミュニケーションの特徴、③母国の非言語コミュニケーションの特徴についての、合計3回実施される。平成26年度は、韓国人と中国人の留学生を対象としてPAC分析を実施した。その結果、非言語対人コミュニケーションにおいてもスキーマが存在していること、また個々の非言語行動を出身国のスキーマから意味づける傾向のあることがうかがえるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のように、研究技法(PAC分析)の有効性を質と量の混合を扱う専門学会で得ることができ、メキシコ国立自治大学での関連情報収集をし、次年度での国際大会で発表するための調査を実施できたことによる。 研究技法であるPAC分析の紹介と技法関連情報の収集等に関しては、2014(平成26)年6月27日(金)・28日(土)にUSAのBoston College で開催された質的研究法と量的研究法の混合や統合についての国際学会であるMixed Method International Research Association (MMIRA)の2014 Conference (第1回大会)に参加し、科学研究費「異文化間非言語対人コミュニケーションの違和感と不適応」に関連する研究情報を収集した。またこの大会で、PAC分析による対人コミュニケーションの研究方法がMixed Methodに属するものとして受け入れられた。 研究課題の非言語コミュニケーションに関連する情報集は、2015(平成27)年2月6日(金)~12日(木)に、メキシコシティのメキシコ国立自治大学の哲学・文学部応用言語学コースに留学中の新井克之氏(九州大学大学院博士課程)と、同メキシコ国立自治大学の研究者を訪問し、科学研究費「異文化間非言語対人コミュニケーションの違和感と不適応」に関連する研究情報を収集した。メキシコ国内においても、民族間で非言語コミュニケーションの様式に違いがあることが確認された。 調査研究に関しては、韓国人留学生を対象とした韓国人の非言語対人コミュニケーションと、中国人留学生を対象とした中国人の非言語コミュニケーションについて実施した。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 次年度は、本年(初年度)の研究成果を7月7日(火)~10日(金)にイタリアのミラノで開催されるヨーロッパ心理学大会、8月6日(木)~8月9日(日)にカナダのトロントで開催されるアメリカ心理学会大会、8月19日(水)~22日(土)にフィリピンのセブ島で開催されるアジア社会心理学会大会で発表する(以上の3件のいずれも発表が受理されている)。また、継続する調査研究に関しては、勤務先の大学には留学生が1名も在学していないので、留学生を受け入れている他大学に出張し調査活動を推進する。 (次年度の研究費の使用計画) 本年度の研究成果の学会発表するための海外(イタリア、カナダ、フィリピンへの)旅費、また引き続いて実施される調査研究の国内出張旅費等に使用。留学生を多く受け入れている他大学は、遠隔地にあり、PAC分析には多くの時間とするため、旅費や宿泊費にかなりの経費を必要とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国出張の旅費関してかなりの金額を予測したため物品費を押さえたこと、また旅費の経費を節減するため格安航空券などを利用し予想よりも安価であったこと、勤務先の規定で自費による支払いとなったことなどで、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は海外での発表が3カ所もあり(イタリア、カナダ、フィリピン)、国内での調査出張も多くなるので、本年度からの繰り越しは実際の経費に組み込むことになる。
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