2018年度は、韓国における<日本研究>に関わる学術誌として評価の高い、「日本研究」誌への学術論文の投稿とその査読(審査)過程への対応を行って採択・刊行まで進めたとともに、インターネットを通じた大規模調査データの収集を中心的に行った。インターネット調査では、時間(遂行時間)のタイムマネジメントを行いながら、「想像型接触」の要因操作を含む実験研究として、大規模調査データのデータ収集を設計し、予定通りのサンプル数のデータ収集を完了することができた。 また、「日本研究」誌に採択された論文の概要は次の通りである。研究の目的は、近隣国である韓国・中国に対して日本人女子大学生がもつ「交流意図」と「国民イメージ」との間の因果関係を明らかにすることである。具体的には、同一質問紙の調査票調査を同一回答者に対して2回行うパネル調査を実施し、分析においては交差遅れ効果モデルと同時効果モデルによる因果関係の探究を行った。まず、基礎統計量分析、ならびに(対応のある)分散分析による検討の結果、日本人女子大学生は中国より韓国に対して有意に高い交流意図および好意的なイメージをいだいていることが確認された。因果関係に関する分析の結果は、交差遅れ効果モデルと同時効果モデルによる分析から、韓国、中国との「交流意図」が原因となって、対韓国人・対中国人の「国民イメージ」(親和性イメージ、信頼性イメージともに)に影響を及ぼしているという因果関係が、一貫して明瞭に認められた。この結果は新規な知見であると言える。またこの結果は、メディアなどによる接触が増えることで交流意図が刺激されることによって、相手国へのイメージが良好なものに改善されるようになるという方策の有用性を示唆する。本研究の知見を踏まえて、国民イメージの改善、そして偏見を低減する対策について接触仮説に基づいて議論した。
|