研究課題/領域番号 |
26380859
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
金政 祐司 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (70388594)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 愛着不安 / 自己愛 / 被受容感 / 被拒絶感 / 攻撃性 / 抑うつ / ストーカー的行為 |
研究実績の概要 |
「青年期の不安と自己愛傾向が不適応な状態や行動を生起させるプロセスに関する研究」への研究助成の三年目である平成28年度は、平成27年度に行った大学生を対象とした調査結果を踏まえ、夫婦ペアを対象としたWeb調査を8月に実施し、さらに、夫婦ペアの縦断調査(Web調査)を2~3月にかけて実施した。また、平成27年度に実施した研究の結果について、日本社会心理学会第57回大会ならびに日本グループ・ダイナミックス学会第63回大会において発表を行った。 平成27年度の大学生を対象にして行った調査結果では、青年期の愛着不安ならびに自己愛傾向が、概念的には対置されるものであるにも関わらず、愛着不安と自己愛傾向は共に、個人間適応である一般他者への攻撃性を高めること、さらに、それらの攻撃性への影響は、周囲の他者からの被受容感によって媒介されることが示された。平成28年度は、その結果を踏まえ、一般他者との関係性のみならず、特定の親密な関係においても同様の結果が再現されるのかについて検討を行うため、夫婦ペアを対象としたWeb調査を実施した。その結果、先の一般他者との関係性の場合と同様に、愛着不安と自己愛傾向の双方が、個人間適応であるパートナー(配偶者)への攻撃性を高め、さらに、それらのパートナーへの攻撃性への影響は、パートナーからの被受容感によって媒介されることが示された。これらの二度の調査結果については、論文としてまとめ、査読付き雑誌である社会心理学会に投稿を行った。 また、愛着不安と自己愛傾向が、恋愛や夫婦関係破綻後のストーキング的行為に及ぼす影響について検討を行うために実施した平成27年度のWeb調査の結果を踏まえて、平成28年度に全国調査を行い、それらの結果については現在論文にまとめている最中であり、これについても査読付き雑誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は二度のWeb調査を実施し、また、これまでの調査結果についても一部論文化し、そのうち1本については査読付き雑誌に投稿を行った。それゆえ、研究は比較的進展したと言える。しかしながら、当初予定していた実験的研究については実施することができなかった。本助成金対象研究を行うための時間を十分に捻出できていないことの主な理由は、本申請研究の研究助成の初年度から継続して、本務校で二つの役職(副学部長ならびに学科長)を担っていたこと、また、学部のカリキュラム改革についても主導的な役割を担っていたことにある。ただし、平成29年度からは、学科長の役を降り、副学部長の役のみとなったことから、今後は研究時間の捻出を行い、研究計画の遅れを取り戻す予定である。また、雑務等についてはアルバイトを積極的に雇うことで研究の進捗状況の改善を図るつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
「青年期の不安と自己愛傾向が不適応な状態や行動を生起させるプロセスに関する研究」への研究助成の最終年度である平成29年度は、新たな研究を行うとともに、これまでの研究結果についてのアウトプットを出す必要性がある。まず、これまでの研究結果として、青年期の愛着不安ならびに自己愛傾向が、一般他者やパートナーへの攻撃性を高めること、さらに、それらの攻撃性への影響は、周囲の他者やパートナーからの被受容感によって媒介されることを示した論文を平成28年度に社会心理学研究(査読付き雑誌)に投稿したが、その論文が掲載可となるよう最善を尽くす。また、愛着不安と自己愛傾向が、恋愛や夫婦関係破綻後のストーキング的行為に及ぼす影響についての研究結果を現在論文としてまとめており、その論文については、査読付き雑誌である心理学研究に投稿を行う予定である。加えて、これまでの研究結果については、国内外の学会において発表を行っていく。 平成29年度の研究計画としては、夫婦ペアの縦断調査(Web調査)を継続して行っていく(3時点目の調査を実施する)ことを計画している。平成28年度に実施した夫婦ペアのWeb調査(1時点目)において、測定された愛着不安ならびに自己愛傾向が、その後(2時点目ならびに3時点目)の夫婦関係での間接的あるいは直接的暴力に対して影響を及ぼすのか、また、それは2時点目ならびに3時点目に測定された配偶者からの被受容感によって媒介されるのかについて検討を行う。また、学生を対象として、他者からの拒絶および受容を示唆するシナリオを用いることで受容条件と拒否条件の2条件を設定し、受容条件では、愛着不安ならびに自己愛傾向の高さが攻撃性を予測しないが、拒絶条件においては、それらの高さが攻撃性を予測するという仮説の基、調査を実施し、愛着不安ならびに自己愛傾向が自我脅威状況において、不適応状態を喚起させるのかについての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、学内業務やこれまでの研究結果の論文化に時間を割いたため、当初予定していた研究を一つ実施することができなかった。そのため、謝金等に関しての支出額が当初の予定よりも少ないものとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、平成28年度に予定していた研究を実施するためリサーチ会社等への謝金や人件費が必要となる。また、これまでの調査結果について、国内外の学会や研究会等で発表していくため、国内外の学会や研究会等への参加費ならびにそのための旅費を必要とする。加えて、これまでの研究結果を論文化していくため、書籍や文献を購入するための図書費を必要とするが、その効率化を行うため、分析や研究資料等の整理を行うアルバイトへの人件費が必要となる。分析や研究資料等の整理に関して効率化することができれば、平成29年度は、当初の予定通りの支出が行えるものと考えられる。
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