本研究の目的は、災害に備えて適切な防災行動を促進するための規定因、すなわち、どのような心理的要因が重要なのかについて、特に災害に対するポジティブな認識や感情の役割に焦点を当てて解明することであった。これまで本研究で行ってきた研究、実験などを整理した上で、新たなWEBでの大規模調査を行うとともに、これまでの研究成果について総合的なとりまとめや研究発表を行った。本年度の具体的な成果は下記の通りである。 1.研究期間の前半に作成してきた災害自己効力感に関する調査に関して総合的なとりまとめを行った。新たな防災行動モデルを提案し、日本社会心理学会でのワークショップにて話題提供を行い、日本心理学会で災害自己効力感尺度を公表した。これらの研究発表を行うことによって、提案した防災行動モデルに関する情報収集を行った。また災害自己効力感に関する大規模WEB調査を実施した。 2.これまでに実施してきた緊急時の避難行動を促進するための説得メッセージに関するシナリオ実験の結果について、総合的な考察を行い日本社会心理学会で学会発表を行った。また、関西大学先端科学技術シンポジウムでも研究発表を行った。主な結果と考察としては、緊急時におけるリスク情報は、避難行動意図に影響を与えること、そして、避難行動を促進させるためには、自己スキーマに一致した情報提供を行うことが効果的であるが、その前提条件として、避難行動に対するコストを低減させる社会的な仕組みを整え、避難行動をポジティブな結果をもたらす行動であるように社会的に認識させる必要があるということを考察した。このような実験結果や提言については、テレビ番組の取材に応じ、避難行動の促進に関するコメントを専門的な立場から発信した。さらに、これらの研究成果に関しては、専門家や一般の人々を対象とした研究に関するアウトリーチ活動も行った。
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