研究課題/領域番号 |
26380864
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
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研究分担者 |
雨宮 護 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (60601383)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 割れ窓理論 / 規範 / 犯罪予防 / 介入 / Broken Windows Theory / Norm / Crime Prevention / Intervention |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成26年度は、先行研究の収集、シンポジウムを通じた研究方法の意識合わせ、犯罪場面での予備的分析を行った。 先行研究の収集では、海外の研究を中心に環境心理学、社会心理学、犯罪学、都市計画等の関連分野で欧文研究を収集し、対象地特性、対象となる秩序違反行為、分析単位の空間解像度、介入の有無、結果についてコーディングした。 研究方法の意識合わせでは、9月にシンポジウム「「割れ窓理論再考:環境手がかりと状況的規範が秩序違反行動に与える影響」を日本心理学会第78回大会で開催し、約50名の参加者を得た。シンポジウムではまず、研究代表者(島田)が、刑事司法での割れ窓理論の発展の歴史にも関わらず心理学的な機制が十分に検討されていないこと、環境手がかりが行動を自動的に喚起すると考える状況的規範や、人間の目の写真を看板で掲示する介入実験など、割れ窓理論の発展形ともいえる理論や実証知見が提出されるようになったこと、など研究を概観した。次に、研究発表として、4名の研究者が、日本国内におけるごみの不適正排出と住民のつながり、ごみの不法投棄と景観・看板、大学キャンパス内の放置駐輪と情報フィードバック、ひったくりと場面の環境特徴との関連についてそれぞれ報告した。最後に、連携研究者2名が環境心理学(環境推論)、社会心理学(状況的規範)の観点から討論を行った。 さらに、具体的な犯罪場面での予備的分析として、被害者と加害者とに面識がない性犯罪約350件の公的記録から、発生場所の環境特徴と加害者・被害者特性との関連を分析した。その結果、集合住宅内でも被害者の年齢層や、加害者の犯罪深度によって発生場所が異なり、メソレベルの環境が犯罪者の選択行動に影響している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は初年度であったが、海外・日本国内に散在する研究を系統的に収集し、研究代表者・研究分担者・連携研究者間のみならず、関連研究者の間で問題意識を共有することができた。また、実地のデータを用いて予備的な分析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画にしたがって、日本の住環境の実情に即した秩序違反評価尺度の確認、秩序違反行為や社会統制の行使に影響するメソレベル環境要因の特定を行う。また、現在、複数の研究サイトが存在するため、今後の介入実験実施に向けて所要の絞り込みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
評定者を雇い上げての予備観察調査を実施する予定であったところ、実地の高精細な犯罪発生データが入手できたため、予定を変更して、メソレベル環境要因と犯罪発生との関連分析を先行して行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
予備観察調査は、本研究の遂行上必須であるため、平成26年度の分析結果を踏まえて実施することとする。
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