| 研究実績の概要 |
本研究の主目的は、『幼児・児童期の他者理解』について社会的文脈での感情に関する会話・コミュニケーションに着目し、発達的な検討を行うことである。最終年度の本年は、今後の発展を視野に入れ、以下の検討を行った。
１．幼稚園児を対象とした検討：幼稚園での観察を継続するとともに、幼稚園期における仲間遊びでの感情語の発達に関する縦断的検討の総括を行い、その一部は国際心理学会(ICP,2016）にて発表・討議を行った。また、仲間遊びにみられるポジティブな感情言及が関係調整においてどのように機能しているかについて検討を進めた。本年度は3～5歳女児間における「かわいい」への言及に着目した分析内容について、学会発表を行った(保育学会大会,2016;発達心理学会大会,2016,2017)。また、感情会話が自己発達や、遊びの中での葛藤調整にどのような役割を果たしているかについて、シンポジウムで発表、討議を行った（発達心理学会大会,2016,2017)。
２．学校児童を対象とした検討：小学校6年学級の「特別活動」授業の継続的な観察を行い、プロトコル化も含めた基礎データの構築を進めた。また、昨年度までに収集されたデータをふまえ、低・高学年児童の「特別活動」時の葛藤を含んだ話し合いにおけるネガティブ感情を含む意見表明のあり方について検討した。日本教育心理学会総会(2016)では、このうち、5年生学級での葛藤状況に関わる話し合いでの、自他の感情的側面をふまえた対処への言及等に焦点をあて報告した。
３．家族を対象とした検討：基礎データの整備及び、これまでの3世代を含む家族間の感情会話の多様性についての検討結果をふまえ、その質的な検討に着手した。本年度は、特に、祖母の感情調整に関わる経験知が媒介する母子の感情会話の分析について焦点をあてた検討を行い、その一部は日本家族心理学会大会(2016)で発表し、討議を行った。
|
