研究課題/領域番号 |
26380870
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
磯邉 聡 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90305102)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育相談 / 特別支援教育 / 臨床心理学 / スクールカウンセリング / 適正支援 / 環境と折り合う力 / 自己理解 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究によって、環境に折り合う力を育むために『適正支援』という概念が有用であることが示唆された。本年度は、高等教育機関における支援の実態と課題を明らかにすることによって発達段階を縦断的に俯瞰し、教育臨床における『適正支援』のあり方についてより深く考察するヒントを得ることを目指した。具体的には、高等教育機関の特別修学支援室、学生相談室、ピアサポート室、ラーニングサポート室、キャリアセンターの視察を実施し、支援体制の概要、支援の実際と課題、義務教育やそれまでの教育段階で必要とされる支援等についての半構造化インタビューを行った。その結果、以下のような知見が得られた。 ①スタッフの啓発と協働体制の構築:学生の持つ特性についての基本的理解や合理的配慮の必要性など、支援に関する啓発を行い、学校生活のさまざまな場面で学生を支えていくネットワーク体制を構築することが有効である。②支援のシステム作り:実際に支援が必要な生徒がいたときの手順や書式等をマニュアルなどにしてまとめ、必要なときにいつでもスタッフが参照できるようにしておくとスムーズに支援が展開できる。③障がいや特性についての自己理解の必要性:いっぽう、支援を受ける学生は自らの特性やありようについて内省し、自己理解を深めることがきわめて重要である。④基本的な生活スキルの習得:挨拶や時間管理といった基本的な生活スキルを身につけることも環境と折り合う際に重要な要件となる。⑤将来を見通したキャリア教育の必要性:進学すれば全てうまくいくというわけではない。就労時から逆算し、そのために今は何をするべきかといった将来を見通したキャリア教育がそれまでの教育課程で求められる。 本年度の研究により、環境と折り合う力を育むための『適正支援』のコンポーネントが揃いつつある。来年度は、これまでの知見を総合し、最終報告書としてまとめたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、高等教育機関における「個に寄り添う支援の現状の把握」を行うことで、幼児期から青年期までの幅広い発達段階における現状と課題を調査することができた。 これらを通じて、『適正支援』を実現するために、援助者に求められるものと同時に、被援助者にも求められるものについて明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究最終年度にあたるので、これまで得られた知見を総合し、「子どもの『環境と折り合う力』を育む支援のありかた」について最終報告書をまとめたい。 また、引き続き先進的あるいはユニークな取り組みをしている機関等の視察や聞き取りも積極的に行い、知見のさらなる洗練に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理等の謝金を必要とする業務が、当初の予定よりもスムースに行われたため、低い執行率にとどまった。 なお、このことによって全体的な研究遂行に支障が生じることはない。
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次年度使用額の使用計画 |
国内外の取り組みをさらに幅広く調査するため、主に旅費を中心に執行する予定である。 また、これらの調査結果を報告書としてまとめるため、印刷費等として研究費を執行する予定である。
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