最終年度にあたり、本年度は『適正支援』の諸相をより多角的に考察するとともに、最終報告書の作成を行った。具体的には、知的障害児の療育を行う児童福祉施設、インクルーシブ教育の先進的な取り組みを行っている学校、被災者支援団体を視察し、インタビューを実施した。その結果、以下のような知見が得られた。 『適正支援』が効果的に行われるためには、①本人、家族、援助者等とのよい連携が基本となる、②発達段階や個人および環境の特性によって「適正支援」は変わる。つまり「適正支援」は力動的(ダイナミック)な概念として捉える必要がある、③エコロジカルアプローチによる包括的な見立てが大切。個人の特性や課題、そして環境の特性や課題を見立てること、④ベースとなるのは、「物理的・心理的な護り」の存在。そしてそれらが悪性の退行を引き起こさないような工夫も必要。あくまでも、発達促進的な「護り」として機能することが大事、⑤発達初期(あるいは支援初期)は、個への寄り添いを十分に行い、基本的信頼感や自己肯定感をはぐくむことを目指す、⑥児童期(あるいは支援中期)は、寄り添いに加えて、個人内外との折り合いを付ける力を少しずつ育てることを目指す、⑦思春期・青年期(あるいは支援後期)は、これまで培った自己肯定感をもとに、社会の中でたくましく生きる自分を意識したかかわりを行う、⑧支援の「作用」と「副作用」を意識したかかわりが大事でPDCAサイクルを意識し、常に見立て直しを行うことがポイント。 これらの知見を総合し、「子どもの『環境と折り合う力』を育むための支援について」のガイドラインを作成した。
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