研究課題/領域番号 |
26380873
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
伊藤 友彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40159893)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 幼児 / 発話 / 流暢性 / 発達 / 吃音 / 発生 / 消失 / 統語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、吃音の発生と消失を解明するための基礎的研究として、非吃音幼児における発話の非流暢性の発達的変化を、音韻発達と統語発達との相互作用という視点から検討し、発話における流暢性の発達モデルを提唱することである。 本年度の目的は、非流暢性の発生期に視点をあて、LARSP (Language Assessment, Remediation and Screening Procedure) の統語発達段階のStageⅠ(0;9~1;6)、StageⅡ(1;6~2;0)、StageⅢ(2;0~2;6) に該当する幼児、各20名を対象として、単語・非語産出課題と自由遊び場面での発話収集を行うことであった。しかし、これまで10年以上ご協力いただいてきたK市の保育所からの協力が、市の方針の変更とのことで、得られない事態となった。そのため、新たに協力していただける保育所を探すこととなった。結果的に、収集できたのは、StageⅠ(0;9~1;6)に該当する3名と、StageⅡ(1;6~2;0) に該当する19名、Stage Ⅲ(2;0~2;6) に該当する10名からの自然発話(一人につき100発話)データのみであり、単語・非語産出課題は実施できなかった。 なお、6月のストックホルムの国際学会 (15th International Clinical Phonetics and Linguistics Conference 2014) において、LARSPの統語発達段階がStageⅡ(1;6~2;0)~StageⅣ(2;6~3;0)に該当する幼児における動詞の形態的側面の発達について発表した。この研究から、日本語を母語とする幼児の動詞の形態論的側面は、統語発達が著しいとされるStageⅡ~Ⅳの時期に急速に発達することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己点検による評価を「やや遅れている」としたのは、データの収集が予定していた対象児数に至らなかったこと、および、予定していた課題の一部(単語・非単語産出課題)が実施できなかったことによる。その理由の一つは、「研究実績の概要」でも述べたように、これまで長期にわたってご協力いただいてきたK市の10箇所の保育所からの協力が、市の方針の変更により、得られなくなったことによる。市の方針の変更の背景には、個人情報の保護に対する、市としての対応の変化などが関係していると思われる。K市のみならず、個人情報の保護等との関係で保育所からのデータ収集は、年々、困難になってきている。本研究の当初の3年間の計画は、LARSP (Language Assessment, Remediation and Screening Procedure) の統語発達段階 (Stage Ⅰ~Ⅶ)のそれぞれに該当する幼児、各20名、計140名から、単語・非語産出課題のデータと自由遊び場面の100発話を収集するというものであった。しかし、上述の事情から、保育所に在籍する多数の幼児を対象とする研究は、今後さらに難しくなると予測される。また、単語・非語産出課題の実施日を、自然発話の収集日と別に設定することは、保育所および対象児の負担が増えることにつながり、許可が得られにくいことが明らかになった。したがって、単語・非語産出課題は、自然発話の収集の中で実施できるように工夫する必要があると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の3年間の研究計画は、当初、LARSP (Language Assessment, Remediation and Screening Procedure) の統語発達段階 (Stage Ⅰ~Ⅶ) のそれぞれに該当する幼児、各20名、計140名から、単語・非語産出課題のデータと自由遊び場面の100発話を収集するというものであった。しかし、「研究実績の概要」、「現在までの達成度」のところで既に述べたように、個人情報の保護等の理由で、保育所からのデータ収集は、これまでよりかなり困難になってきている。また、自然発話の収集日以外に、さらに時間と場所を設定して単語・非語産出課題を実施することは、保育所および対象児の負担を増やすことになることから、許可を得るのは難しいことが明らかになった。 したがって、当初予定していた対象児数の確保、およびデータ収集法(自然発話と単語・非語産出課題を分けて実施すること)の実施は、いずれも難しいことが明らかになった。そこで、2年目以降は、保育所および対象児の負担を少しでも軽減させるために、1)LARSPの各段階の対象児の数を、各段階20名から各段階10名に減らし、2)単語・非語産出課題は非語産出課題のみとし、自然発話収集場面で、質問のかたちで実施するととしたい。さらに、3)データの不足を補うために、研究代表者の研究室が既に保有している幼児の自然発話データ(横断研究データと縦断研究データ)も分析対象に加えることとする。
|