研究課題/領域番号 |
26380879
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
栗山 和広 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10170094)
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研究分担者 |
假屋園 昭彦 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (30274674)
吉田 甫 立命館大学, 文学部, 教授 (80094085)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 割合概念 / 概念的理解 / 認知的障害 |
研究実績の概要 |
本研究は,子どもにとって理解することが極めて困難な割合概念について,(1)なぜそれが難しいのかを子どもの思考や方略という視点から明らかにし,(2)それらの研究に基づいて教授プログラムを開発・実践して,子どもの概念的理解を深化させることが目的である。本年度は,(1)については,子どもが日常生活の体験から獲得しているインフォ-マルな知識を明らかにし,さらに新しい概念を学習する際に子どもが遭遇する認知的な障害を同定した。割合を学習していない小学4年生,5年生,割合を学習した後の6年生を対象に,割合概念のインフォ-マルな知識,子どもにとって認知的障害となっている等全体の概念について調査をおこなった。その結果,割合の大きさの量についての正答率は,4年生が68%,5年生が72%,6年生が81%と,インフォ-マルに割合の量的知識を獲得していることが明らかになった。割合の認知的障害としての等全体については,全体が一致している場合は,4年生,5年生,6年生の正答率は,それぞれ74%,75%,75%と,等全体についてインフォ-マルに理解していることが明らかになった。等全体における全体が一致していない場合の正答率は,4年生が1.7%,5年生が7.0%,6年生が18.8%であった。等全体における全体の不一致が認知的障害となっていることが明らかになった。等全体の不一致の認知的障害を克服する新たなカリキュラムを構成し,その効果を検証することが必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
割合を学習していない小学4年生から5年生に対して,割合のインフォ-マルな知識を明らかにするための調査を行った。さらに,割合の学習が終わった6年生に対して,等全体の理解について調査を行った。その結果,割合について学習していない4年生,5年生とも,割合の量的知識をインフォ-マルに獲得していることが明らかになった。6年生では,全体が一致していない等全体の理解は18.8%と極めて低いことが明らかになった。本研究の目的は,割合がなぜ難しいかを子どもの思考から明らかにし,それに基づいて教授プログラムを開発することである。割合のインフォ-マルな知識と等全体の理解の困難性が明らかになったことで,新しいカリキュラムの構成が可能となり,研究の目的の達成度はかなり進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度において,子どものもつ割合のインフォ-マルな知識,認知的障害が明らかになった。平成27年度は,子どものもつ豊かなインフォ-マルな知識をカリキュラムに組み込む,認知的障害を考慮する,という2つの視点を取り入れたカリキュラム構成について,研究分担者と5年生の教師との話し合いを行い,新しいカリキュラム構成に基づく教授介入について検討する。平成28年度は,新しく開発したカリキュラム構成に基づいた教授介入を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究会の出張が実施できなかったこと,予定していた洋書の購入が実施できなかったこと,分析に必要とするパソコン購入ができなかったことなどにより,それらを次年度において実施する。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた洋書の購入,デ-タ分析に必要とするパソコンの購入を実施する。本年度は,調査のデ-タ分析に必要な人件費と謝金,研究会の開催における謝金と出張,研究に必要な認知心理学関係図書の購入,研究成果の発表における出張費,学会誌への論文の採録への費用,実験における授業の記録のビデオカメラの購入,消耗費,について使用する。
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