本研究は、フィンランドのいじめ対策プログラム「キヴァ」の実践アイディアに触発を得て、日本流の実践を学校現場との共同で創案・改善して公開・共有することを目的とし、下記のように実施した。 〈実践創案〉実践見学や試行結果から検討し、プログラムをより短縮し構成を明確化する必要性が明らかになり、最小限で繰り返し実施可能な「いじめ免疫プログラム」を創案した。これを、複数の市の教育委員会の協力を得て研修で紹介した。実践集約結果に基づき、他の自治体からの聴き取り調査があり、ほかの自治体でも「いじめ免疫プログラム」を独自のかたちで開発する方向になり、協働が開始された。 〈海外との交流〉日本心理学会での日中韓シンポジウム、国際学会での対策アプリについての情報交換、ユネスコと梨花女子大学が主催した国際シンポジウムに招聘されての参加、アメリカと韓国からいじめやネットいじめ研究の専門家を招聘しての講演、などを行った。 〈成果公開と今後〉フィンランドのキヴァ会議に講演者として招聘され、日本の取組を紹介。これらの実践や研究のもととなる論考を含む共編著をケンブリッジ大学出版会から出版。いじめ防止実践の評価指標に関する論文が統計専門誌に掲載。ネットいじめやそのほかのネット問題に総合的に対処するためのスマホサミットについての評価研究も、英文書籍の章、英文学術誌に発表。学校や企業等からのキヴァ・プログラムに関する問い合わせが相次ぎ、ネット上の予防教育アプリ開発の可能性を模索。韓国の研究者との、ゲームなどによるいじめ防止に関する共編著の検討が進んでいる。 以上、フィンランドのいじめ対策「キヴァ・プログラム」日本版の実践創案を行い、複数の自治体で試行し質的な評価研究を行った。量的評価研究の同時実施はできなかったが、関連実践においての新指標や分析枠組みの提案が英文学術誌に掲載された。
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