研究課題/領域番号 |
26380887
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
児玉 真樹子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10513202)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キャリアレジリエンス / リアリティショック |
研究実績の概要 |
キャリアレジリエンスとは,キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性であり,その下位概念としてはチャレンジ・問題解決・適応力(以下チャレンジ),ソーシャルスキル,新奇性・興味関心の多様性(以下,新奇多様性),未来志向,援助志向の5つがある(児玉, 印刷中)。研究1では,リアリティショックにおけるキャリアレジリエンスの働きを解明することを目的とする。具体的には,キャリアレジリエンスを構成する5つの下位概念のうちいずれが,リアリティショック経験の回避と関連があるのか,またリアリティショック経験によるキャリア形成へのネガティブな影響を減少させる働きを示すかについて明らかにすることを目的とする。 2015年1月に,Webによる調査法で,入社1年目の正社員233名分(男性89名,女性144名; 平均年齢23.11歳)のデータを得た。 入社前のイメージと現実とのギャップを認知しかつそれにショックを受けたと認識している場合,リアリティショック経験有りと判断した。t検定により,リアリティショックの経験有無によるキャリアレジリエンスの下位概念の得点の差を検討したところ,チャレンジと未来志向において,リアリティショック経験無群が有群に比べ高かった。これよりこれらの下位概念の保有度合が高い者は,リアリティショックを経験しない傾向が生じると考えられる。 また,キャリアレジリエンスの各下位概念の高低と各項目のリアリティショックの経験の有無を独立変数とした2要因分散分析を行った。その結果でみられた交互作用はいずれも,リアリティショック経験によるキャリア形成へのネガティブな影響を減少させる働きを示していた。キャリアレジリエンスの下位概念のうち,特にその働きを多く示したものは,ソーシャルスキルであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画は,リアリティショックにおけるキャリアレジリエンスの働きを解明することを目的とした研究1の実施であった。計画通り,Web調査会社に依頼をして,これまで転職経験のない,就職して1年目の就業者(正社員)のデータを収集した。当初は300人のデータを得る予定であったが,Web調査会社の登録者のうち「これまで転職経験のない入社1年目の正社員」という条件を満たす人数は少なく,予定の調査人数は得られなかった。しかし,分析には耐えうる233名分のデータが得られた。データの分析に関しては,分析計画に示していた分散分析に加え,t検定等のほかの分析も行った。 以上のような状況をふまえ,ほぼ計画通りに研究はすすんでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず,研究1については,分析が不十分であるため,さらなる分析をすすめていく。その結果を基に学会(教育心理学会および日本心理学会)で発表する予定である。また,論文化もすすめていく予定である。 また,研究計画にあるとおり,職業生活上の変化から生じるキャリア危機におけるキャリアレジリエンスの働きを解明することを目的とした研究2の実施も行う予定である。調査内容の質問項目を収集,作成し,Web調査会社に依頼をして,調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,調査をH26年秋頃に実施する予定であったが,H27年1月となった。そのため分析の計画も若干遅れたため,分析ソフトの購入ができなかった。(そのため,現在行っている分析は簡単なものにとどまっている)
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次年度使用額の使用計画 |
当初購入を予定していた分析ソフトを購入し,研究1のさらなる分析を行う。また,研究2の分析にも使用する。
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