児玉(2015)によると,キャリアレジリエンスは“キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性”であり,その構成要素は,問題対応力,ソーシャルスキル,新奇・多様性,未来志向,援助志向の5つである。 研究1(H26年度)ではリアリティショックにおける,研究2(H27年度)では職業生活上の変化におけるキャリアレジリエンスの働きを検討した。研究3(H28~29年度)は,就職活動におけるキャリアレジリエンスの働きを検討し,H28年度は大学生用キャリアレジリエンス尺度の開発と就職活動開始前の第1回目調査(2017年1月)を実施した。H29年度は就職活動の終盤時期の第2回目調査(2017年10月)を実施し,分析を行った。 研究3に関して,2回の調査に回答し,就職活動中に不採用の経験をした127名のデータを得た。調査内容は,1回目はキャリアレジリエンスと職業的アイデンティティと成人キャリア成熟,2回目は1回目の内容に加え就職活動維持過程,就職活動ストレスであった。就職活動前のキャリアレジリエンスおよびキャリア形成度合が就職活動中に感じるストレスや就職活動維持過程を介して就職活動後のキャリア形成度合に影響を及ぼすというプロセスを想定し,分析を行った。その結果,キャリアレジリエンスのうち問題対応力,ソーシャルスキル,新奇・多様性,未来志向は就職活動維持過程の認知変数を媒介してキャリア形成を促す働きを示すことが判明した。また,キャリアレジリエンスのうち未来志向が就職活動ストレスのうち就労目標不確定を抑制し,キャリア形成を促進する働きを担うことが示された。以上より,キャリアレジリエンスのうち援助志向を除く4つの構成要素が,就職活動中に不採用の経験といった辛い状況に直面しても,キャリア形成を促進する働きを示すことが判明した。
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