研究課題/領域番号 |
26380891
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
藤田 敦 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (80253376)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教授法 / 関連づけ方略 / 授業指導案 |
研究実績の概要 |
「わかる」とは,未知の事項を既知の事項に関連づけるという認知的操作であるという前提で,知識を関連づける教授法や学習法を「関連づけ方略」と名付け,実際の授業の中では,この方略がどのような教授―学習活動として実現できるのかという問題について検討した。具体的には,小学校の授業の実践記録として指導案や板書記録の形式で保存・公開されている資料を分析対象とし,「関連づけ方略」に相当する教授活動,学習活動のリストを作成し,その機能を考察した。知識獲得に関わる心的処理過程を参考に,4つの機能を想定してリストを分類した。Ⅰ:既知と未知の整理機能-授業の導入時には,前時までの振り返りや残された課題の確認が行われる。学習に際し,何が既知で,何が未知の事項なのかを明確に区別しておくこと,あるいは学習内容に関連する知識領域の範囲を限定しておくことは,後の関連づけを行う前提となる。Ⅱ:有意味受容学習機能-学習課題に対する問題解決活動(新たな知識の発見)を実行する際に,新たな学習事項の体制化を容易にするために,関連する既習事項や生活体験に注目する,汎用可能な表現形式に抽象化する,学習内容の実用的な意味を理解するといった思考活動を行う。Ⅲ:知識同化機能-新たな情報を既有の知識を使って説明・表現することによって,理解を形成する。具体的には,新たな情報を別の表現に置き換える,既習事項によって新たな学習内容を表現し直すといった思考活動が行われる。Ⅳ:知識ネットワークへの位置づけ機能 新たな学習内容を多様な知識や応用問題などと関連づけることで,学習した事項の汎用性や実用性が高まる。そのため,授業のまとめや発展として,応用可能な範囲の拡がりとその限界に対する認識を形成するような学習活動が行われている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では,授業の実践記録や指導案,教材などに関する文献資料,授業実践を紹介する市販のDVDや筆者が実際の授業を録画したビデオなどを対象に,授業中の教師の教授活動や児童の学習活動を分析することであった。研究の結果,ほぼ当初の目的通りに,「関連づけ方略」が,どのような教授-学習活動として具現化しているかを抽出・分類し,リスト化することができた。具体的な授業モデルを作成するまでには至らなかったが,H28年度の研究において,残された課題は十分に達成できると判断し,「おおむね順調」という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の研究においてリスト化した「関連づけ方略」に相当する教授学習活動を踏まえながら,教育実習等の場面において学生が実践する授業の指導案を作成する。その際には,授業者(教育実習生)と実習指導教員(クラス担任)による指導案審議の場で,クラスの実態や学習の進度を慎重に考慮した上で,指導計画を具体化していくことになる。この指導案にそった授業を実施し,そこで展開される教授-学習活動を映像・音声・筆記等によって記録する。授業記録は,学習の流れにおける「関連づけ方略」の位置づけと役割に注目しながら,小学校教員からの評価も加えて,教授法としての効果を分析する。その結果より,授業中の教授法としての方略の有効性を検討すると共に,教員養成教育の中で,関連づけ方略などの教授技術を身につけることが,実践的指導力の育成に対して及ぼす影響(可能性と問題)についても考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を発表する学会が,地元の大学で開催されて旅費(交通費)が必要なくなった。また,ビデオカメラや画像編集用ソフト等を購入する予定であったが,他の研究経費によって購入したため残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は研究成果の発表のための学会が2回(香川,福岡)予定されており,そのための旅費を使用する計画である。また,当初から計画していた報告書や資料作成用のレーザープリンターの購入,およびポータブルコンピュータの購入を予定している。
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