「わかる」とは,未知の事項を既知の事項に関連づけるという認知的操作であるという観点から,知識を関連づける教授法や学習法を「関連づけ方略」と名付け,実際の授業の中では,どのような教授―学習活動として実現できるのかという問題について検討することが,本研究計画の主目的であった。 前年度には,「関連づけ方略」に相当する教授活動,学習活動のリストを作成した。本年度は,各教育委員会等が公式に公表している学習指導案などを分析対象として,実際の授業の中では,どのような教授学習活動が実践されているかを推定した。授業を,①導入,②展開,③発展,④終末という4位相に分け,各位相に出現した関連づけ方略の頻度を集計したところ,各位相別に多く見られた関連づけ方略に該当する活動は,以下の通りであった。 ①導入時には,前時までに学習した公式や解法の確認が多くなる。既習事項で解決できない問題を提示し,新たな学習課題の確認が行われる(既知と未知の整理)。また,新たな単元の導入時は,生活体験の中に問いを見つけ,本時の課題につなげていく(生活知への同化)。②展開時には,提示された問いに対する問題解決の手段として,既知の概念,表現,事例に置き換えて,合意・納得を形成していく活動が行われる(知識同化)。また,答えや解法を学ぶことで,どのようなメリットがあるのか(~に役立つ,~が簡単になる)を知る(有意味受容過程)。③発展時には,本時の学習事項を利用して,練習問題,応用問題を解く。あるいは,利用できないタイプの問題を知る(知識ネットワーク)。④終末時には,本時のまとめとして,授業の中でどのような未知が既知になったのか,まだ解決していない事項は何かを確認する(再度の既知と未知の整理)。 以上の結果を基に,知識の関連づけを促す授業展開のモデルを作成した。今後は,このモデルの実用上の効果や課題について検証していく。
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