研究課題
オペラント行動の遅延価値割引課題における衝動的選択の出現を検討した。マウス用スキナーボックス2 台・制御装置1 台を用い、DDY マウス雄性3個体(統制系統)、ELマウス雄性5個体を被験動物として、以下の手続きに従い、オペラント行動を検討した(麦島他,2006)。各ボックスには固定式レバーが右と左に計2 つ装着されていた。1試行を離散試行型の課題26ユニットで編成し、はじめの6ユニットを強制選択課題、あとの20ユニットを自由選択課題とした。1ユニットは45秒とし、選択期間・遅延期間・待機期間で構成されていた。どの期間であるのかと、どちらのレバーを選択したかを、左右の電球の点灯と点滅で呈示した。左右のレバーは、統制条件を除いて、一方を即時少量報酬レバー、他方を遅延多量報酬レバーとした。自由選択課題において、即時少量報酬レバーと遅延多量報酬レバーの選択配分を検討した。左右レバーの遅延時間と報酬量は、4条件を実施した。各個体につき1 日1 試行を行い、1 条件は連続15 日とした。このうち、前期10 日間は反応獲得期として、後期5 日間を反応安定期とした。分析対象は反応安定期とした。データから、Logue et al. (1984)が対応法則の説明に用いた式を敷衍して、DDYマウスおよびELマウスにおける遅延時間と報酬量の双方について平面座標にプロットし、その回帰直線を算出し、その決定係数を算出した。これらの結果より、DDYマウスは報酬量比1:3と均衡する遅延時間比は7.5s:15s付近であるのに対し、ELマウスでは7.5s:10s付近であることが暫定的に示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画としてのDDYマウスおよびELマウスにおける報酬比と遅延時間比の等価点について、第一の個体群の実験を実施し、選択数の解析を行い、ELマウスの衝動性の数量的な特質を明らかにできたこと。また、現在、Logue et al. (1984)が対応法則の説明に用いた式を用いた回帰直線および決定係数の算出を行っているところであること。さらには、不注意の行動指標になり得る潜在制止学習の不全について、第一の実験を開始できていること。
今後は、次の点を推進する計画である。1)ELマウスのオペラント行動の遅延価値割引課題において、報酬量比と遅延時間比との等価点に対してatomoxetine投与がどのような効果をもつかについての検討。2)ELマウスのオペラント行動の遅延価値割引課題において、刺激明瞭度と衝動的行動との関数関係と、それへのatomoxetine投与効果の検討。3)不注意の行動指標になり得る潜在制止学習の不全がELマウスで示されるか否か。またそれへのatomoxetine等の投与効果。4)ELマウスの聴覚性事象関連電位のうちMMN様反応を測定し、ADHD注意障害への前注意過程の関与を検討する。これらの検討の経過により、他の実験条件等に変更するほうが科学的意義が高いと判断できる場合は、柔軟に対応する。
当初は2014年度にオペラント行動解析システムのソフトウェア改良を計画していたが、改良前の条件で実験を精密に行ったことにより延長したため、ソフトウェア改良が2015年度に持ち越されたため。
上記の通り、オペラント行動解析システムのソフトウェア改良に使用することを計画している。
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福岡県立大学心理臨床研究
巻: 7 ページ: 67-76