研究課題/領域番号 |
26380894
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
麦島 剛 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (40308143)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 注意欠陥多動性障害 / モデル動物研究 / 衝動性 / 注意 / 遅延価値割引 / 実験行動分析 / 行動薬理学 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
ADHD主症状の衝動性と不注意をそれぞれ検討するため、オペラント行動の遅延価値割引課題における衝動的選択の検討を深め、不注意の指標としての潜在制止学習の不全について試験した。 衝動性の検討のため、前年度と同じ2レバーの装置を用いて、DDY マウス雄性3個体(統制系統)、ELマウス雄性3個体に対して遅延価値割引課題を行った。左右のレバーは、統制条件を除いて、一方を即時少量報酬 (SS) 、他方を遅延多量報酬 (LL) とし、選択配分を検討した。遅延時間と報酬量は、4条件を実施した。各個体1 日1 試行、1 条件は連続15 日とし、後期5 日間を分析対象とした。このデータと前年度のデータを重ね合わせて、Logue et al. (1984) の式を敷衍して回帰直線と決定係数を算出した。これらの結果より、DDYは報酬量比1:3と均衡する遅延時間比は7.5s:15s付近、ELではほぼ7.5s:10sであることが明らかになった。 さらに、不注意の検討のため、潜在制止学習不全 (Bruno et al., 2007) について試験した。DDY雌性12個体(うち非CS呈示群6・CS呈示群6)およびEL雌性7個体(うち非CS群4・CS群3)に対し、味覚嫌悪学習における潜在制止学習を検討するため、全個体に対して7日間、摂水時間制限を行ったあと、CS群には1~4日目に塩酸水、非CS群には精製水を与え、5日目に全個体に塩酸水を与えた直後に塩化カリウム水溶液を腹腔内投与した。6日目には全個体に精製水、7日目に塩酸水を与えた。5日目と7日目の塩酸水消費量比より、DDYではCS群では非CS群のようには消費量抑制が起こらず潜在制止学習が成立したのに対し、ELでは群間の差が見られず同学習の不全が示唆された。この系統は衝動性に加えて不注意を呈し、ADHDモデルとしての妥当性がさらに高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画としてのDDYマウスおよびELマウスにおける報酬比と遅延時間比の等価点についての実験を重ね、第一の個体群の実験を実施し、選択数の解析を行い、ELマウスの衝動性の数量的な特質を確定できたこと。さらにLogue et al. (1984) が対応法則の説明に用いた式を用いた回帰直線および決定係数の算出を行ったこと。また、ELマウスが不注意の行動指標になり得る潜在制止学習の不全を呈することを明らかにしたこと。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次の点を推進する計画である。 1)ELマウスのオペラント行動の遅延価値割引課題において、報酬量比と遅延時間比との等価点の確定。2)並立連鎖スケジュールによる遅延価値割引課題での等価点の検討。3)衝動性に対する治療薬投与の効果についての検討。4)不注意を反映する潜在制止学習の不全についてのELマウスにおける精密な検討。5)ADHDモデルマウスSHRまたはELマウスの聴覚性事象関連電位のうちMMN様反応を測定し、ADHD注意障害への前注意過程の関与を検討すること。 これらの検討の経過により、他の実験条件等に変更するほうが科学的意義が高いと判断できる場合は、柔軟に対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ADHD治療薬(atomoxetineまたはmethylphenidate)の投与効果の条件を2016年度に行うこととしたため、これらの試薬を2016年度に購入することになったことと、オペラント行動解析システムのソフト改良に伴う周辺環境の整備を2016年度に行うことになったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、試薬、報酬ペレット、弁別刺激改良等のオペラント行動実験のための諸費用、手術関連器具および関連消耗品、電気生理学実験のための機器および薬品等の消耗品、学会発表や論文作成のための諸費用が見込まれる。
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