申請者はあいまい性の理解を必要とする文末表現に着目し、文末表現の持つあいまい性と情報のなわばり認識がどのように理解されるようになるのかについて調査を行うことを目的とした。平成28年度までの研究より、あいまい性の理解については、なわばり認識だけでなく配慮表現認識とそれにかかわる個人特性といった要因との関係を含み込んだより複雑な要因空間を想定し、調査を行う必要性が考えられた。そこで平成29年度は調査対象を変更し、幼児・児童を対象とした言語発達のアセスメントツールとしての「あいまい性理解課題」を開発するための基礎固めを行うことにした。具体的には、①配慮表現認識と個人の特性との関連について質問紙調査を行い、これらの要因の関係を明らかにする。②上記の調査結果をもとに、調査対象を幼児・児童から中学生・高校生・大学生・現職者に調査対象を変更し、あいまい性の理解・なわばり認識・配慮表現認識とそれにかかわる個人特性といった要因との関係を明らかにし、幼児・児童を対象とした言語発達のアセスメントツールとしての「あいまい性理解課題」を開発するための基礎データを収集することにした。そこで平成29年度は配慮表現認識と個人の特性や配慮表現行動を必要とする場面での実行経験との関連についての質問紙調査の結果を検討し、これらの要因の関係を明らかにした(小泉・飯島・池田,2018)。 平成30年度はこれらの結果をもとに、あいまい性の理解・なわばり認識・ポライトネス(配慮)表現の理解と共感性との関連について中学生・高校生520名、大学生158名を対象に調査を行い、配慮表現の理解がいつ頃から行われるのか、また配慮表現の理解に共感性の理解がどのように影響するのかについて検討を行った。
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