研究課題/領域番号 |
26380904
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
渡邊 弥生 法政大学, 文学部, 教授 (00210956)
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研究分担者 |
西山 久子 福岡教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (80461250)
小林 朋子 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90337733)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学校危機 / 予防教育 / 感情リテラシー / ソーシャルスキル / 危機認知 / フレームワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、「学校危機認知」の視点を強化した「学校予防教育」の導入の在り方に関するフレームワークの構築を目指している。その背景から平成26年度は、3つのことを具体的な目標としてきた。 (1)学校危機認知尺度のデータを収集し分析することを計画したが、結果的に教員1,000名以上のデータ(幼稚園、小学校、高等学校、大学)を収集し、校務分掌別、学校種別で危機の認知の違いを明らかにした。その結果、管理職や指導職は危機対応が概ねできていると認識しており、学校スタッフにおいてズレが存在することが明らかとなった。この成果はパリで開催された国際応用心理学会と、大阪で開催された心理学と行動科学のアジア大会で発表した。また、アメリカでの学校危機予防教育について講師をする資格を得て、学校で予防教育のフレームワークを知ることができた。さらに、日本の学校での事故などの事例を用いて、生徒指導主事との間でどのような危機トレーニングをするべきかという研修を重ね一定のマニュアル作りをすることができた。(2)感情リテラシーの発達については、幼児期から青年期迄の感情の発達について、日本心理学会でシンポジウムを開催し、感情といじめや非行の関係についての関連性を検討することができた。その結果、年齢とともに感情のボキャブラリーが増えて行くことや、性差が見られることが明らかになった。また、感情の強さや入り交じった感情が小学生になると可能になることがわかった。(3)ソーシャルスキルトレーニングのアセスメントツールとしてZoo-U Japanを開発し、日米の比較を通して、アセスメントとしての妥当性を検証してきたが、Journal of Game Healthに掲載が決定した。ゲーム型のアセスメントツールによって、今後危機介入の効果をみるためのアセスメントとして使用する可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調な滑り出しと判断できる根拠は、いずれも当初に計画していた3つの計画を遂行できたことからである。学校危機認知についての調査から、小学校から高等学校までを対象に、学校に教育職として籍を置くスタッフを対象に,学校危機についての認識を調査した。学校危機調査(6領域:家庭・学校・地域連携、価値、組織、環境、カリキュラム、トレーニング)に,ソーシャルスキルトレーニングについて実施した結果,子ども達の具体的な問題に対応している教育相談担当は,危機認識が十分でないという認識を強くもっている一方、管理職や指導職は危機対応が概ねできていると認識しており、学校スタッフにおいてズレが存在することが明らかとなった。また、具体的な介入の試みとして、児童生徒が死亡する学校危機において、速やかに対応するためのスキルを向上させるためのシミュレーション訓練の教員研修を実施した。市町教育委員会指導主事35名を対象として行い、プールでの事故を想定した事例を用いた。その結果、研修により学校危機の不安が低下し自信が上昇したことが示された。さらに、感情のリテラシー等ソーシャルスキルの横断的な発達の推移を明らかにすることができた。感情のボキャブラリーや共感性の発達、表情理解等一定の研究結果を得ることができた。予定していた学会でも発表し、発達心理学研究にも掲載された。客観的なツールとして開発していたソーシャルスキルのアセスメントツールの妥当性についても認められ、査読論文に掲載が決定したことから、今後日本においてさらに使用することができることになり大きな成果である(Differences Between Japanese and U.S. Children's Performance on “Zoo U”: A Game-Based Social Skills,Games for Health Journal)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、学校危機認知尺度を、学校規模や勤務年数などの側面から検討し、危機意識の違いについてさらに詳細分析する予定である。そのうえで、危機アセスメントに基づいたコンサルテーションや介入を考えたい。そのために、アメリカの危機予防フレームワークであるPREPaREにも採用されているRTIやPBISの考え方を取入れ、3つのカテゴリーの区別の方法や介入によって問題が解決していることを認知することによって教員の満足度が高まる支援を考えたい。ポジティヴな学校風土と、子どもへの危機意識やソーシャルスキルおよび感情リテラシーの育成を支援する介入を検討したい。6月に感情心理学会で感情についての最先端の研究交流をする予定であり、小学校、高校での具体的な介入を考える予定である。静岡では、さらに研修を重ね、事故のほかにいじめ、といった危機場面を設定した具体的な介入のための研修を重ねて行く予定である。アセスメントとして、Zoo-U についての導入も継続して考えて行く予定である。したがって、コンサルテーションのための危機側面を明らかにすること、具体的な対応や介入の研修モデルをつくること、実際に効果があるかどうかのエビデンスを得ることを今後の目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
感情のリテラシーなどの研究成果を洋雑誌に掲載する予定で、校正および添削依頼の謝金として計上していたが、いまだ校正の途上にあることにより、支払いがまだであることや、データ分析の謝金を予定していたがこれについても分析途中であること、さらには、Zoo-U Japanの精緻化の相談を目的に、ノースキャロライナのDeRosier博士を訪ねる計画が予定通りいかなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
理由に述べたことを継続しており、校正と謝金は終了してからの支払いにあてる。ノースキャロライナへの出張は、学会での成果発表にスケジュールにおいて影響するので、可能であれば当初の計画通り執行したい。相手方とはメールでやりとりしている。
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