研究課題/領域番号 |
26380905
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
外山 紀子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 概念発達 / 素朴生物学 / 病気に関する理解 / 情報源の選択 / 食 |
研究実績の概要 |
27年度の研究実績は以下の2点にまとめらる。 (1)食事場面観察データの論文化:前年度に東京都内・沖縄県多良間島で実施した保育園1歳児クラスの食事場面観察データの分析を行った。食べられるか否かの判断,食べ物や食具の共有の程度を東京・多良間島間で比較した結果,多良間島の方が食べられる領域が広いことが示された。この点を,社会的ネットワークの質的相違と絡めて議論した。 (2)伝染性・非伝染性・ケガの相違に関する理解の検討:前年度に実施した予備実験を踏まえ,幼児・小学生・大学生に対する個別実験を行った結果,以下の3点が示された。(a)幼児でも内在的正義(病気の原因を不道徳な行為に求める思考)を支持しなかった。(b)児童期半ばすぎから,非伝染性の病気(アトピー性皮膚炎など)には体質が関与しているという理解がみられるようになった。(c)大人は,症状の程度とアレルギー性か否かによって,病気の原因を区別してとらえていた。 (3)病気に関する情報源の選択に関する理解の検討:幼児から大学生に対する個別実験を行った結果,以下の2点が示された。(a)幼児は病気に関する情報源として身近な他者(母親や先生)と専門家(医師)を共に信頼していた。ただし,病気のメカニズムや薬といった専門的な事柄については専門家に,病気になったときの食べ物など日常的な事柄については母親により信頼を置くというように,両者を区別していた。(b)児童期に入ると専門家により大きな信頼を置くようになったが,大人はアレルギー性の病気については専門家より母親により信頼を置くというように,病気の種類に応じて情報源を選択していた。 (4)食の世代間比較:大学生とその親世代(1960年代生まれ)を対象として,子どもの頃の食に関するイメージ調査を行った。その結果,食産業の変遷にともない,家庭の食が質的に変化していることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に実施した予備実験を踏まえ,3つの本実験を予定通り実施することができた。また,観察データについても論文化まで行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる28年度は,病因に関する理解について,子どもと大人の思考の連続性,科学的・非科学的思考の共存性を検討する実験を実施する予定である。すでに予備実験は終えており,28年度中に本実験を行い,論文化まで行うことを目標としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
観察データの分析に使用する予定だったインタラクション分析ソフトが,使用機器の制限により使用できないことがわかり,当初の予定に沿って購入できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度である28年度は,複数の実験を予定しており,データ収集に必要な研究補助者を雇用するなどして支出予定である。
|