28年度は,以下の検討を行った。
(1)病気に関する選択的信頼の検討:前年度に幼児から大学生を対象とした実験を行った結果,幼児でも,病気の治し方に関する情報源として身近な他者(母親や園の先生)と専門家(医師や看護師)を信頼していることが認められた。そこで28年度は,情報源の選択が,病気になったとき専門家に受診した経験があるかどうかによって相違があるか,検討した。3-4歳児32名を対象とする個別インタビュー実験を行い,まず,咳やかゆみなどで医師の診察を受けた経験があるかどうかを聞いた。その後に,前年度に実施した情報源の選択課題を行い,専門家に受診した経験の有無と病気の治し方に関する情報源の選択に関連があるかどうかをみた。その結果,両者の間に有意な関連性は認められなかった。慢性的な疾患がなく,通常の生活を送っている幼児については,専門家に受診した経験があるからといって,病気の治し方に関する情報源として専門家である医師により大きな信頼を寄せるとは限らないことが示された。
(2)大学生の食調査:前年度に実施した大学生とその親世代における食の思い出調査,大学生を対象とした食写真調査,さらに家族生活と食に関する統計データを分析し,『若者たちの食卓』を刊行した。日本における食の変貌は食の外部化や簡便化に加え,核家族化の進行,女性の高学歴化と社会進出,さらには長時間労働の常態化といった社会の大きな変化の中に位置づけるべき現象であることを論じた。
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