研究課題/領域番号 |
26380913
|
研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
西野 泰代 広島修道大学, 人文学部, 教授 (40610530)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | いじめ / 学級 / 児童生徒 / 傍観行動 / ピアプレッシャー / 教師の態度 / 学校段階 |
研究実績の概要 |
本研究は、いじめが発生する心理的プロセスについて、マイクロ(個人)とマクロ(集団)の両側面から検討をおこない、個人と環境(集団)との相互作用の中でいじめが発生するメカニズムを明らかにすることを目的とするものである。具体的には、いじめを規定する個人レベルの要因が学級集団の中でどのように形成され、また、それらがどのような状況時にいじめの加害行動を助長する要因となるのか、あるいは、いじめ被害者を助ける行動を促進する要因となるのかについて、学級集団の状態と個人要因との相互作用に注目して検討する。 昨年度には、いじめ経験(加害、被害、傍観、仲裁)および個人の特性や学級集団の特徴について、対象とした児童生徒(小学校3校18クラスと中学校2校16クラス;小学4年生から中学3年生)の実態を探るべく、2回の質問紙調査を実施して基礎的データ(縦断データ)を収集した。その結果をもとに、今年度はさらに質問紙の内容について、学級集団の特徴を探る項目を拡充して、学期ごとの調査を計3回(6月、10月、翌年1月)実施し、縦断データを収集した。データの分析結果から、一定期間内にいじめの加害と被害の両方を経験した者が小学生よりも中学生に多いこと(海外の研究では年齢の上昇とともに両方を経験した者の割合は減少することが報告されている)や、いじめの加害と被害の両方を経験した群では加害も被害も経験していない群に比べて小中学生ともに学級の規則正しさと学級担任のいじめに対する呼応性について否定的に評価されていることが示された。特に、中学生では,加害と被害の両方を経験した群ではどちらも経験していない群と比較して、教師からの自律性支援や教室内での人間関係について否定的に評価されていることが示された。これにより、いじめの負の連鎖を断つために、学校段階による差異や学級という集団レベルの要因を考慮することの重要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、今年度3回(学期ごと;6月、10月、翌年1月)の質問紙調査を実施することができた。持ち帰りによる回答形式を採用した質問紙調査であるため、学校での一斉回答形式と比べて、回収された解答用紙の数は当初の予想よりやや少ないことは否めない。しかしながら、対象とした6コホートのうち、2コホートは3年間、別のコホートで2年間、残りの2コホートで1年間の縦断データがそれぞれ収集できるため、全体のサンプル数としては十分であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度(本研究3年目)に2回の質問紙調査(6月と10月)を予定している。当初の計画では次年度に最終回となる1回の調査のみを予定していたが、対象となった地域の教育委員会主催による「中学生を対象とした(いじめに関する)生徒会サミット」(市内全域の中学校生徒会役員が参加)が今年度(本研究2年目)8月に開催され、その後10月に調査を実施したので、次年度も同様の会が8月に予定されていることから、今年度同様、サミット後の生徒の変化について調査するために10月実施の調査を加えることとした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度からの繰り越し分が多かった(学内研究助成との併用による)ことと、学生アルバイトを雇用したデータ入力作業が若干遅れていることによる予定された賃金の未精算、および国際学会参加費の支払い時期の遅れ(3月末に清算したため今期分として計上されなかった)、以上3点の理由によるものと思われる。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度、2回の質問紙調査を実施する(当初は1回の予定)ことにより、今年度繰り越し分の助成金を使用する予定である。
|