本研究では、‘moral disengagement’ をキーワードとして、規範意識を持ちながらも、いじめ加害あるいはいじめへの加担をする子どもの存在に着目し、いじめが発生する心理的プロセスについてマイクロ(個人)とマクロ(集団)の両側面から検討をおこなうことによりいじめの予防策について考え、学校現場での教育的介入に資する知見を提供することを目的とした。小学4年生から中学3年生までを対象として3年間(平成26年度から28年度まで)の縦断調査を実施し、ピアプレッシャーへの敏感さや自己価値、moral disengagementなどの個人的要因、教師の態度や学級風土、友人との関係などの社会心理学的要因を測定するデータを収集した。 研究最終年度となる平成29年度にはデータを分析した結果から得られた成果をまとめて、編著書1冊(『個と関係性の発達心理学 -社会的存在としての人間の発達ー』、北大路書房)、論文1本(学級で「大切にされる」感覚といじめ経験との関連. 広島修道大学論集,58巻,第1号,13-23.)、学会発表3本(“A multilevel study of individual characteristics and classroom climate in explaining moral disengagement in bullying”18th ECDP;「教師の認知と生徒のいじめ経験との関連ー教師の効力感と学級風土を指標とした検討ー」教育心理学会第59回大会;「いじめ場面での傍観行動の生起に関する発達的差異についての検討」発達心理学会第29回大会)、シンポジウム2本(18th ECDP、教育心理学会第59回大会)、リーフレット1冊(「いじめの負の連鎖を断つために」)、それぞれにおいて発表した。
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