研究課題/領域番号 |
26380916
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研究機関 | 大分県立芸術文化短期大学 |
研究代表者 |
藤田 文 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (50300489)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交代行動 / 幼児期 / 発達 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、子どもが遊具を使用する際の交代制ルールに着目し、仲間関係の中でどのように自己と他者との関係調整をするのかを明らかにすることである。27年度は26年度の分析を進めて幼児の三人組のゲーム場面での交代行動の分析を実施し、分析ケース数を増やすことを目的としていた。また、交代制ルールの共有過程の性差と共有がうまくいかない特徴的なケースを記述することを目的としていた。 27年度に分析数を増やすことができた。これまでの分析に加えて4歳児と5歳児の交代行動の特徴を再度検討し直した。その結果、これまでの研究と同様に交代回数が4歳児は5歳児よりも少ないことと、4歳児の交代の規準が全部交代や好きなだけ交代が多いことから、より強固に4歳児は交代に関する明確な規準がないことや他者とゲームを共有していないことが示された。一方5歳児は、交代回数が多いことや、1回交代が多く、好きなだけ交代が少ないことから、交代に関する規準が明確になることや、他者とゲームを共有していることが示された。このことから、4歳児から5歳児にかけて交代行動が著しく発達することがより明確に示された。 さらに、男児・女児の性差、特に交代制ルールの崩壊過程を取り出して男女で比較した。 男女の交代行動の違いを明らかにするために、特徴的な事例を抽出し分析した。その結果、 女児のルールの崩壊過程は1人の子どものルールの変更に周りの子どもが同調して生じるものだということが示された。一方、男児のルール崩壊過程は1人の子どものルールの変更から崩壊がはじまり、それに周りの子どもは対抗しようとするが、主張の強い子どもに従わされて生じることが示された。このことより、ルール崩壊過程には性差が見られることが示された。女児は他者との関わりの中でルールが崩壊するが、男児は独立した中でルールが崩壊し、力関係が影響することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、おおむね順調に進んでいる。27年度は、26年度に引き続いて、交代行動の分析を実施して、ケース数を増やすことを目的としていた。3種類のゲームにおける交代行動の詳細な行動分析を行い、ケース数を増やすことで、交代行動の4歳から5歳の発達をより明確に示すことができた。また、年齢差とともに性差を示すことができた。特に交代制ルールの共有がうまくいかない特徴的なケースについて記述し、ルールの崩壊過程の性差を示すことができた。 研究成果の一部を日本教育心理学会と九州心理学会で発表し、大分県立芸術文化短期大学の研究紀要にもまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、行動コーディング解析ソフトを使用して、交代行動だけでなく、情動的な側面の抽出方法を検討する。注意の側面、姿勢や視線、からだの向きなどをこれまでも分析対象として試みているが、測定があいまいなる面もある。今年度は、行動分析方法をさらに継続して検討していく予定である。 27年度は性差に注目したが、28年度は3種類のゲームの特性と幼児の行動の出現やルール共有過程の関連についても検討して行く。ゲームの特性によって、幼児の行動の引き出され方が異なっているようである。交代制ルールが産出されやすく仲間との関係調整がしやすいゲームと、情動に引きづられてルールが崩壊しやすいゲームがあるようである。しかし、ゲームのどういった特性が行動と関連しているのかは明らかにされていない。これが明らかになれば、保育場面での環境設定に示唆を与えられると考えられるため、ゲーム特性を分析していく予定である。 28年度には、7月にICP(International Congress of Psychology)国際心理学会と3月に発達心理学会において研究成果を発表する予定である。また、最終年度であるため、3年間の研究成果を全体的にまとめていく。 推進の課題としては、データ分析に時間がかかる点と同時に分析を行ってもらう研究協力者の確保であった。今年度は、夏休み前には、データの全体の逐語録作成を終了し、夏休み中には研究協力者を確保して分析を終了させる予定である。夏休み中の研究協力者の承諾は得ている。
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