研究実績の概要 |
本研究の目的は、「対人的楽観性に焦点を当てた抑うつの予防的アプローチ法」を開発し、その効果を検討することである。うつ病の病態の多様化、低年齢化などが問題になるなか、再発予防を含むうつ病の予防が喫緊の課題であることは論を俟たない。抑うつは、その罹患による社会経済的なコストも高く(Jane-Llopis et al., 2003)、将来的なコストを減らすという点でも、抑うつ予防の重要性は高い(e.g., Gillham et al., 2000)。本研究で取り上げる楽観性(楽観的)という概念については、Abramson, Seligman, & Teasdale(1978)が、無力感の対応策として楽観的な期待の必要性を論じたことに端を発し、そのネガティブな側面も含め数々の実証的な研究がなされてきた(e.g., Boyer、2006;Seligman、1991;戸ヶ崎・坂野、1993)。Seligman & Csikszentmihalyi(2000)が提唱したことで知られる「ポジティブ心理学」の重要な概念であり、心身の健康回復やストレス緩和にプラスの影響を及ぼすとされる(e.g., 藤南・園田, 1994;Umstattd, McAuley, Motl, & Rosengren, 2007)。抑うつ研究における、予防的アプローチの重要性はよく知られており、関連する研究も多数あるが、本研究では、ポジティブ心理学のモデルに基づき、楽観性という人間のよりポジティブな側面に焦点を当てた「肯定的介入」について検討を行った。当該年度においては、肯定的介入に焦点を当てた「面接プロセス」についても、継続的に検討を行った。対人的楽観性に焦点を当てた抑うつの予防的アプローチ法は、短期的視点からも、長期的視点からも、一定の効果をもつことが示唆された。
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