研究課題/領域番号 |
26380923
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 知音 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20291388)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 学習障害 / ディスレクシア / 書字障害 / 質問紙 / 大学生 / 妥当性 |
研究実績の概要 |
学習障害(LD)のある大学生が、学修支援としての合理的配慮を受けられるようになるためのアセスメント・ツールを開発する。具体的には、LDが背景にあると疑われるような「読み書き」の困難があるかどうかを査定するための「読み書き関連困り感質問紙」を作成する。実際の読み書き能力を査定するための課題も開発する。読み書き能力課題は、質問紙の妥当性検証に用いると同時に、合理的配慮の判断基準として活用できるよう、標準化を試みる。全般的な低学力と捉えられがちなLDのある学生が、合理的配慮を受けることで、高等教育で学ぶ機会を保障されるようになることが期待される。平成26年度は質問紙の作成、項目の検討を行った。項目は、国内外の関連尺度、事例報告、手記等から、LDのある人が体験すると思われる困難を抽出し、それをKJ法で分類し、そのカテゴリをもとに項目を作成した。大学生228名の回答から、下位尺度を構成するとともに、読書活動との関連から妥当性を検討した。項目分析の結果、いずれの項目も十分な弁別能力を示した。続いて、因子分析の結果をもとに現在と小学生時代における書字、読み、その他(記憶や言語表出など)の、計6下位尺度を作った。読み関連の尺度と読書経験に相関が見られ、妥当性の根拠が得られた。その成果は日本LD学会第23回大会で報告した。さらに妥当性の検討を進めるため、読み書き能力課題の作成を進めた。読み書き能力課題の作成にあたっては、国内で出版されている学習障害関係の検査および失語症検査を集め、参考にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、質問紙の作成とデータ収集までを初年度に行う予定であったが、質問紙の作成が順調に進み、成果発表を行うことができた。妥当性検証のための課題開発を前倒しし、予備データを取り始めることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、妥当性検証のための行動データを収集することを目標とする。音読、黙読、視写に関する課題を完成させ、信州大学、明星大学を中心にデータ収集を行う。また、学習障害の診断がある人への研究協力依頼を行う。以上の結果をふまえ、妥当性検証を進めるとともに、項目の精選を行い、より少ない項目で読み書きの問題についての支援ニーズを調査できるようにする。また、読み書きに関する大学生の基準データを集めることで、大学生の読み書きに関する合理的配慮の決定の根拠データとして使えるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進んでいたため、当初27年度に予定していた読み書き課題の開発について、26年度に前倒しして進められるように前倒し支払い請求を行った。実際の購入に必要となった検査及び図書の総額が、予定した額を下回ったために差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は読み書きデータ収集を予定しており、データ収集実施補助に関する謝金、旅費等が主な支出となる予定である。次年度使用額は、平成27年度請求額と合わせて使用する。
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