研究課題
読み書きに障害のある大学生が、合理的配慮を受けられるようになるためのアセスメント・ツールを開発した。具体的には、LDが背景にあると疑われるような「読み書き」の困難があるかどうかを査定するための「読み書き関連尺度」と、実際の読み書き能力を査定するための課題を開発した。読み書き能力課題は、質問紙の妥当性検証に用いると同時に、合理的配慮の判断基準として活用できるよう、標準化を試みた。平成28年度は音読課題、黙読課題、視写課題を作成し、質問紙と共にデータを収集し、信頼性、妥当性の検討を行った。大学生の読み書き関連尺度α=.92、小学生の頃の読み書き関連尺度はα=.93であり、充分な信頼性が示された。また、読み書き課題について、有意味視写課題のエラー数以外は1回目と2回目の成績に強い相関が見られ、各課題の信頼性が得られた。また、質問紙でたずねた読み書きについての自己評価の結果は、実際の読み書き行動と高い相関を示した。特に読む事を中心に、小学生の頃と現在では小学生の頃の読み書きに関する尺度得点の方が実際の読み書きとの相関が高かった。また、現在・過去共に読み書きの主観的な困り感は黙読よりも音読課題との相関が高くなった。音読課題は処理速度と関係する。言語的な記号(文字)の処理が自動化できていないと、無意味綴りの音読は時間がかかってしまう。現在にも過去にも困り感がある学生は、この処理の自動化が難しいがために読み書きに苦労した人であったと考えられる。これらの課題および質問紙を使用することで、全般的な低学力と捉えられがちなLDのある学生が、合理的配慮を受けることで、高等教育で学ぶ機会を保障されるようになることが期待される。
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信州心理臨床紀要 (15), 71-82, 2016
巻: 15 ページ: 71-82