研究課題/領域番号 |
26380928
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
竹田 伸也 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00441569)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | もの忘れ検診 / 受診意図 / 重大性についての認知 / 予防習慣についての知識 / 包括的もの忘れ検診プログラム / 竹田式三色組合せテスト / 危険因子 |
研究実績の概要 |
今年度は、もの忘れ検診の受診意図に影響を与える要因について主に検討した。本調査は、八戸医療生協と香川医療生協、高知医療生協の組合員を対象に、2015年6月から2016年1月の間に実施した。本調査に同意をして調査票に回答した人のうち、欠損値のあるデータを除いた345人(平均年齢71.6±6.3歳、男性75人、女性270人)を解析の対象とした。対象からは、1)現在認知症で医療機関に通院している者、2)この1年以内に医療機関などでもの忘れチェックを受けた者、3)もの忘れ外来や脳ドックへの受診を予約している者は除外した。対象者のうち受診意図が強い者は110人、受診意図が弱い者は234人であった。 その結果、認知症になると重大な結果を招くという認知の程度(オッズ比:5.71、95%信頼区間:2.95 – 11.03)、認知症予防の生活習慣に関する知識の程度(オッズ比:1.99、95%信頼区間:1.16 – 3.42)が受診意図に有意な影響力を持っていることが示された。 本調査の結果とこれまでの先行研究のレビューを基に、包括的もの忘れ検診プログラムを作成した。本プログラムは、10項目からなる質問項目と立方体模写、および竹田式三色組合せテスト(TTCC)から構成した。質問項目は、認知症の初期症状として認めやすい状態を10項目作成した。このうち、質問項目はチェックが1つつくごとに1点を加点し、立方体模写は立方体の透視図が模写できなければ2点を加点した。本プログラムでは、質問項目と立方体模写の合計点が3点以上かつTTCCが陽性の場合、陽性(認知症の疑いあり)と判定するという基準を設けた。また、認知症の危険因子についても尋ねる項目を14項目用意し、結果に応じて認知症予防についての指導ができるようにした。本プログラムを、現在モデル地区において実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もの忘れ検診への受診意図に関する調査と包括的もの忘れ検診プログラムの作成については、順調に進んでいる。しかしながら、プログラムを実施する地域がまだ十分とはいえないため、「(3)やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年の研究結果を踏まえ、包括的認知症検診プログラムの修正を図り、より現実に即した検診プログラムの完成を目指す。修正したプログラムを新たなモデル地域に実施し、その結果について効果測定を行う。 以上の研究をまとめ、得られた知見について、国内外の関連学会で発表を行い、学会誌にその成果を投稿する予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度では、もの忘れ検診受診意図の調査研究に関する成果を、国際学会で発表し、また国際学会誌に論文として投稿する予定として、これらの旅費および翻訳料を予算計上していた。 しかし、本調査が終了したのが平成28年1月であり、そこから解析作業を進めたため、この2つの課題を昨年度中に遂行できなかった。 したがって、これらの課題を実行する予算を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、昨年度実施した調査研究を英語論文としてまとめ、国際学会誌に投稿するため、これらの翻訳料および投稿料を使用する。また、引き続き包括的もの忘れ検診プログラムを実施し、実施協力地域に赴くための旅費および協力機関とのやりとりに用いる通信費を使用する。 また、もの忘れ検診を含めた認知症対策についての先進的試みを学ぶため、海外での研修を予定しており、包括的もの忘れ検診プログラムの成果について国内・国外の関連学会での発表を予定しているため、これらの旅費を使用する。必要に応じて、データ解析用ソフトウェア、レーザープリンターインクジェット、データ保存媒体、封筒・印刷用紙などの消耗品および研究関連図書費を使用する。
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