研究課題/領域番号 |
26380930
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古賀 聡 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (00631269)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心理劇 / サイコドラマ / ソシオドラマ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は対象者の緊張性や防衛性に配慮した心理劇(サイコドラマ・ソシオドラマ)の新たな技法の開発であり、平成26年度は以下の研究を行った。 (1)親子関係をテーマとするソシオドラマの展開についての研究:親との新たな関係を再構築していく青年期において、ソシオドラマを用いた親に対する認識の変化を促すことを目的としたソシオドラマを実施し、親子関係認知に関する尺度を用いて、その効果について検討を行った。結果、役割交換法を用いたソシオドラマの有効性が示唆された。この研究成果は学術雑誌に掲載された【ソシオドラマにおける役割交換法が大学生の親子関係認知に与える影響、心理劇研究、第38巻、15-27、共著者:岩男尚美】。 (2)サイコドラマの技法であるマジックショップを用いて、対象者の緊張性や防衛性を緩和し自発的な自己表現を促すための工夫について大学生を対象とした心理劇セッションを通じて検討を行った。その結果、補助自我と呼ばれる主役を支援する機能を工夫することが参加者の自己理解に影響を及ぼすことが示唆された。この研究成果は、日本心理臨床学会第33回秋季大会で報告された【マジックショップにおける展開が心理劇の参加体験に及ぼす影響、ポスター発表、平成26年8月26】)。 (3)精神科病院における心理劇を用いた臨床実践のあり方について、これまでの臨床事例を題材としてメタ分析を行った。対象はアルコール使用障害者、統合失調症者、認知症者を対象とする心理劇実践事例である。それぞれの対象が抱える認知的、感情的特性を配慮した心理劇の導入と展開が治療効果を高まることが示唆された。この研究の成果は、第40回西日本心理劇学会・第20回日本心理劇学会合同大会(福岡)のシンポジウムで発表された【シンポジウム:ライフサイクルに寄りそう心理劇「成人期:停滞からの脱却をめざす心理劇」平成27年2月22日】
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで実践報告が多かった心理劇の効果について、ソシオドラマとサイコドラマともに尺度を用いた実証的研究を行った点である。さらに、臨床実践における心理劇適用においては、対象者の緊張性や防衛性に配慮した導入は不可欠であるが、これまでの臨床事例に対するメタ的分析を行い、臨床実践上の配慮のポイントを明確にしたことも、この領域の発展に大きく寄与したと考えられる。また、これらの研究成果は、すべて学術論文、学会発表として公開した点も、本研究が順調に進展していることを示すと考えられる。 平成26年度における主だった研究成果の公開を以下に示す。 ①ソシオドラマにおける役割交換法が大学生の親子関係認知に与える影響、心理劇研究、第38巻、15-27、共著者:岩男尚美 ②マジックショップにおける展開が心理劇の参加体験に及ぼす影響、ポスター発表、平成26年8月26 ③第40回西日本心理劇学会・第20回日本心理劇学会合同大会(福岡)シンポジウム:ライフサイクルに寄りそう心理劇「成人期:停滞からの脱却をめざす心理劇」平成27年2月22日
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今後の研究の推進方策 |
今後は大学生などの青年期以外の年代に対する心理劇の検証を行う予定である。40代~50代を対象としたグループに対して、ソシオドラマやサイコドラマを施行し、尺度を用いた検討を行う。 また、ソシオドラマを実施する際に、テーマの提示方法に対する検証を行う。絵画や写真などの視覚的刺激と俳句等の言語的刺激を用いたソシオドラマについて検証することを計画している。
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