平成28年度は対象者の緊張性や防衛性に配慮した心理劇の方法論について検討を行った。個人の経験や表象世界を劇として表現化するサイコドラマと個人には焦点化せずに社会的役割関係や社会的課題をテーマとして提示するソシオドラマの技法の開発を行った。大学生を対象とした心理劇演習、対人援助職を対象とした心理劇研修会、中高年と高齢者を対象とした生涯学習場面で心理劇を実施し、比較的心理劇体験が少ない対象者に対して、安全かつ効果的に心理劇する方法について検討した。心理劇セッションにおける観察記録、セッション後の心理劇尺度とアンケートを用いて、その効果について検討した。 具体的には以下の心理劇技法を開発した。 ①回想内容を写真イメージとして外在化したのちに劇化を行うサイコドラマ技法の開発、②日常生活で抱えている葛藤や問題からの心理劇導入を行わず、理想的なできごとや例外的にうまくいったことに題材を求め心理劇のなかで現実的な検討を行っていく解決志向アプローチを取り入れたサイコドラマ技法の開発、③写真や絵画、玩具などの非言語的刺激を題材にグループメンバー間で共有できる季節の行事や懐かしさを伴う過去の生活体験を振り返るようなソシオドラマ技法の開発、④俳句などの言語的刺激を題材にグループメンバー間で共有できる季節の行事や懐かしさを伴う過去の生活体験を振り返るようなソシオドラマ技法の開発 いずれの技法においても上記の尺度やアンケートからも、心理劇経験が少ない対象者にとっても必要以上の不安や戸惑いを感じずに、自己理解が進むことが示された。
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