研究課題/領域番号 |
26380931
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 安之 九州大学, 基幹教育院, 教授 (30195408)
|
研究分担者 |
内野 悌司 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (00294603)
菊池 悌一郎 九州工業大学, 保健センター, 准教授 (00380741)
福留 留美 九州大学, 基幹教育院, 教授 (40295754)
福盛 英明 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40304844)
松下 智子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40618071)
高石 恭子 甲南大学, 文学部, 教授 (60248094)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 発達障害学生 / 合理的配慮 / 学生相談 / 実態調査 / 支援開始時期 / 診断 / 連携 / 支援項目 |
研究実績の概要 |
前年度に計画を立てた4大学の学生相談機関での発達障害及びその傾向のある学生への支援事例実態調査を実施した。4大学の常勤・非常勤カウンセラー26名からの回答が得られ、175例を集積した。これらを分析した結果、支援開始時期は入学期(1・2年次)と卒業期(4年次)が多いこと、23%の支援学生に休学経験があること、医師による診断を受けている事例は38%であること、診断名およびカウンセラーによる見立て名では自閉スペクトラム症が65%と多いこと、医師による診断を受けた時期は大学入学後が67%を占めること、本人だけでなく保護者や教員とも連携して面接を行った事例は63%にのぼること、支援項目別に見ると心理支援、修学支援、自己理解支援、コミュニケーション支援がこの順に多い一方で出口・就労支援、入学・移行支援は少ないことが確認された。この調査にもとづき、2編の論文を公表した。 平成27年度1回目研究会議(9月に九州大学にて開催)、第2回研究会議(11月に甲南大学にて開催)、第3回研究会議(3月に九州大学にて開催)では、この分析結果について議論を行ったほか、一般教員対象の当該学生への合理的配慮に関する意識調査、全国のカウンセラー対象の支援実態調査の案について検討を行い、これらの調査のためのアンケート用紙2種を完成させた。 また1回目研究会議時に九州大学の工学部・理学部・文学部の計3名の教員と合同会議を開催し、当該学生への支援や合理的配慮について意見交換を行った。2回目研究会議時には甲南大学の学長補佐・学生部事務部長・理工学部の教員など5名の教職員との合同会議を開催し、同様の事項について意見交換を行った。これらの意見交換の内容を活かして、一般教員対象の意識調査の実施案を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の達成目標は、(1)発達障害傾向のある学生の支援実践例を蓄積して分析すること、(2)九州大学・甲南大学で一般教職員との合同会議を行い合理的配慮について意見交換を行うこと、(3)教職員・カウンセラーを対象とした発達障害傾向のある学生への支援に関するアンケート用紙を作成し配布することであった。 (1)については175例を集積し、支援開始時期、休学経験、医師による診断名とカウンセラーの見立て名、医師による診断の時期、支援のための面接の対象者、実施された支援項目などについて分析を行った。 (2)については両大学において実施し、貴重な意見を得ることができた。 (3)については、1つは対象を教員に絞り込んだアンケート用紙を完成させ、研究チームのメンバーが所属する4大学で調査を実施する準備を整え、もう1つは全国のカウンセラーを対象としたアンケート用紙を完成させた。次年度にはこの2つのアンケート調査を実施できるように準備を整えた。 以上のように、研究は予定どおりに進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本研究の最終年度であり、以下の研究を推進する予定である。 (1)広島大学と九州工業大学で研究会議を行うが、そのさい、平成27年度に九州大学、甲南大学で開催したのと同様に一般教職員との合同会議を併せて開催し、教職員がすでに実施している合理的配慮、今後実施可能と思われる合理的配慮、配慮にあたって検討すべき課題などについて意見交換する。 (2)発達障害傾向のある学生への支援実践例をすでに175例蓄積したので、その分析結果を日本学生相談学会にて研究発表するとともに、さらに分析を進め、学生がどのような問題を抱えたさいに支援が開始され、それに対してどのような支援が行われているのか、などについて研究会議にて検討する。 (3)前年度に完成させた教員対象のアンケート用紙、および全国のカウンセラー対象のアンケート用紙を用いて調査を実施し、その結果を分析する。教員対象の調査により、一般教員が発達障害学生及びその傾向を有する学生に対してどのような支援および合理的配慮の経験があるのか、またどのような配慮を合理的と考えるのかなどについて回答を求め、一般教員の当該学生への合理的配慮に関する意識を捉える。全国のカウンセラー対象のアンケート調査では、当該学生にどのような内容の支援を実施しているか、支援を進めるうえでどのようなことに困難を感じているかについて回答を求め、支援の現状を把握する。 上記の研究を推進するため、前年度に引き続き、今後も研究協力者として田島晶子氏の参加を求める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の菊池悌一郎氏に380円のわずかな残金が生じた。物品費として心理検査用紙を購入したが、旅費と合算したところ、配分総額にわずかに満たなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越して使用する計画である。
|