研究課題/領域番号 |
26380932
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
伊藤 義徳 琉球大学, 教育学部, 准教授 (40367082)
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研究分担者 |
佐藤 徳 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (00422626)
杉浦 義典 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (20377609)
湯川 進太郎 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 准教授 (60323234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンパッション / いじめ予防 / 学級介入 / イクアニミティ / クラスメイトを下に見る経験 |
研究実績の概要 |
本年度は,一つの介入研究と,一つの調査研究,および一つの実験研究を行った。 実験研究においては,開発中のプログラムにおいて重視すべき要因の一つとして,イクアニミティの効果について検討した。イクアニミティは,刺激や感情に流されない平静な心的態度を意味する。このスキルにより,感情と距離を置くことが可能となる。仏教では「捨(ウペッカー)」と呼ばれ,重要な心的態度の一つと考えられてきたが,心理学的な検討はこれまで行われてきていない。そこで,怒り感情が喚起する場面で,イクアニミティが発揮できた人とできなかった人のその後の感情反応や課題成績を比較した。その結果,イクアニミティが発揮できると,感情に流されず,その後の課題に冷静に取り組めることが明らかとなった。イクアニミティはプログラムに反映させるべき重要なよそであることが確認された。 さらに,いじめ予防教育プログラムの効果を検討する上で,いじめに対する予防効果をいかにして検証するかが重要である。本研究では,その予測因子として「「クラスメイトを下に見る経験」に関する質問紙を作成した。中学生290名(M=14.24, SD=0.99)を対象に調査を行い,4因子からなる「クラスメイトを「下に見る」気持ち尺度」が開発され,信頼性と妥当性が確認された。 以上の研究,および前年度までの知見を踏まえて,コンパッションに基づくいじめ予防教育プログラムを策定し,中学1年生4クラスを対象にその効果を検証した。50分×4回のセッションのプログラムであり,最長4ヶ月のフォローアップ調査を実施した。その結果,短期的には気分の改善は見られるものの,長期的には効果が見られないという結果になった。プログラムのさらなる改善,教員向け研修の早期導入などが検討材料となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で最も中核となる,いじめ予防教育プログラムの初案を策定し,その効果を検証する介入研究を始めて行えた点は,本研究の大きな進展といえる。プログラムに盛り込むべき主要な要因に関する検討もおおよそ終えることができた。また,本研究で中核とする予防に関する指標も開発した。他方で,研究計画段階では,教員を対象にした研修プログラムを適用し,その効果を検討することも本年度の目標に据えていたが,学校現場の事情もあり,十分この点を検討することができなかった。以上のことから,(2)おおむね順調に進展している,と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の中核であるプログラムの初案は策されたが,その効果が十分検証されなかった。本研究の結果改善すべき重要な点がいくつか明らかとなったため,次年度は,こうした点を改善し,十分なプログラムを策定した上で,効果を検証したい。具体的には,教員向け研修プログラムの早期実施,プログラム内容に「いじめ予防」に関するより直接的な心理教育を含める,いじめの予防に関わると考えられる個人的信念に対する配慮などが検討点としてあげられている。こうした点を考慮したプログラムを策定し,効果検証を行う。 さらに,当初の研究計画にあるように,開発したプログラムの普及に関わる取り組みも行う。プログラム冊子を作成し,講演会等を開催して一般教員に紹介するほか,関心ある先生方には配布を行う予定である。
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