研究実績の概要 |
本研究の目的は悲嘆の過程を自伝的記憶の機能から明らかにすることであった。文献検討・資料収集の結果,当初計画では明らかにしたい現象を捉えることができないと考えられ,計画を見直し平成28年度までに2つの質問紙調査を実施した。最終年度である平成29年度の計画は,1.調査1のデータ分析,学会発表,論文執筆,2.調査2のデータ分析,学会発表の準備,3.質的研究に関する具体的計画立案と実施,4. 包括的に変数間の関連を捉えることを目的とした調査3の計画立案と実施,の4点であった。 計画1については,調査1データの量的・質的分析を行い,学会発表を行った。現在論文を執筆している。計画2については,調査2データの分析を行い,学会発表申し込みを行った。新たな研究課題に向けてもさらなる分析を加えているところである。計画3については研究期間内に実施に至らなったため,今後の課題としたい。 計画4に関しては,研究1・2の成果に基づき焦点を絞った2つのWeb調査を実施した。はじめに約10,000名を対象に死別体験と継続する絆に関する調査を実施した。次にその中から,配偶者もしくは親との死別経験者で次の調査協力に同意した者400名を対象に,無意図的想起の機能に関する調査を実施した。現在データ分析を行っているところである。成果は,平成30年度以降,学会発表・論文投稿等を通して社会に発信していく予定である。 研究期間全体として,まだ分析の途中ではあるが,死別経験のありようで絆及び自伝的記憶は影響を受けること,及び悲嘆や絆と故人に関する記憶想起には関連があることが明らかとなった。そして記憶想起に着目することにより絆の適応-不適応性が捉えられ得ることが示唆された。以上が本研究の主たる成果であり,死別への適応における継続する絆のはたらきを明らかにする上で,また悲嘆の理解と援助においても重要な知見であると考えられる。
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