研究実績の概要 |
本研究は,非行少年の生活環境における様々な被害経験,とりわけいじめ,虐待,犯罪被害に注目し,これらの被害経験が非行少年の性格特性や非行性に与える影響を明らかにすることであった。非行少年が受けた虐待以外の他の被害経験も彼らの生活感覚,非行への指向性などに影響を与えていると推測された。 昨年度までは,非行少年に加えて一般青年に対しても家庭・学校・地域等の生活環境における様々な被害体験についての質問紙を実施し,被害経験と心理特性との関連を探った。その結果,非行少年の被害経験はその量・質ともに一般青年を上回るものであった。また,被害経験と非行性との関連については,早期非行(初発非行)に関して実証的に示し,非行少年の怒りの強さについても明らかにした。その研究成果は“The 31th International Congress of Psychology (ICP2016), Japan”, “the 21st Workshop on Aggression 2016, Rumania”などの国際学会で研究発表した。そして,本年度(2017年度)においては,研究期間の最終年度であるため,これまでの研究成果の再検討を行った。非行少年が入所する矯正施設(少年鑑別所等)の研究協力者とともに非行少年に関する情報・データの整理及び再分析の検討を進めた。特に,非行少年の抱える怒りに関する理解を深めるために,非行臨床の実務専門家が行う面接場面における非行少年の心情理解について検討した。先の国際学会での研究発表の成果や研究協力者との検討・知見を踏まえて,これらの研究成果の更なる検証を行うために,刑事司法及び少年犯罪心理学研究で先駆的なポーツマス大学(イギリス)等の関係者からアドバイスをもらい検討を重ねた。日英共通に見られる少年非行の減少傾向や,いじめ等の被害経験に関する非行問題について比較検討を行った。この研究成果は今後さらにまとめ,とりわけいじめ問題に焦点を当てて今後の研究として展開する計画である。
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