研究課題/領域番号 |
26380939
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
百々 尚美 北海道医療大学, 心理科学部, 准教授 (70351707)
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研究分担者 |
橋本 竜作 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (00411372)
金澤 潤一郎 北海道医療大学, 心理科学部, 准教授 (80632489)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社交不安障害 / 認知行動療法 / 自律神経系 |
研究実績の概要 |
社交不安障害(Social Anxiety Disorder;以下SAD)患者は、人前で話すなど注目を浴びる場面で非常に強い不安を感じ、ときに「他人は自分を見て笑っている」など、不合理な推測(歪んだ認知)をしている。結果、SAD 患者は社会参加を避け、不利益を被っている。SAD患者は対峙した人が自身から視線を逸らしたときにも強い不安を感じる。これは他者の視線へ過剰に注意を向け、さらに本来は中性的な状況を「目を逸らした人物が不快に感じているに違いない」と否定的に解釈することによって不安が喚起されると考えられている。現在SAD 患者が持つ認知の歪みの修正に焦点を当てた認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;以下CBT)が有力な治療手段として実施されて、そこでは面接のような不安場面にSAD 患者を曝露しつつ、バイアスの修正を行っている。しかしSAD 患者を初めから現実の対人場面に暴露することはハードルが高く、どのような反応が生じるかも予測がつかない。そこでディスプレイに映し出された人がSAD 患者に視線を合わせたり、逸らしたりする仮想世界を作り、治療に利用できないかという着想に至った。もし仮想現実でも現実場面に近い不安を惹起することができ、治療(認知の歪みの修正)をすることができればコンピューターをもちいたCBT を通じて多くのSAD 患者の役に立つだろうと考えた(研究の意義)。 SAD患者の治療にもちいる「社交不安喚起に向けた刺激の作成」と、その「有用性の検証」するために、H28年度はこれまで実施してきた実験結果を解析してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、SAD患者の治療にもちいる「社交不安喚起に向けた刺激の作成」と、その「有用性の検証」を目的とし、仮想現実の刺激の有効性を検証している。 H28年度は、健常大学生を対象とし、仮想現実の刺激による不安喚起に社交不安の程度が及ぼす影響を検討したH27年度に実施した実験の結果を解析した。健常大学生を対象として実験協力を求めるにあたり、対象となりえる実験協力者を十分獲得することができていない。そのため研究の進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、SAD患者の治療にもちいる「社交不安喚起に向けた刺激の作成」と、その「有用性の検証」を目的とし、仮想現実の刺激の有効性を検証している。 H29年度はこれまでの実験を継続する予定である。 仮想現実の刺激は、モーションポートレート株式会社(MP 社)にて作成した、人物(アバター)の動画(参考資料:http://www.motionportrait.com/technology/参照)をもちいる。 アバターは正面のほかに、上下左右などに視線を逸らす、首を振る、表情(喜び・驚き・恐怖・嫌悪・怒り・悲しみ)などが可能であり、これらを組み合わせて協力者へ提示する。 健常大学生を協力者とし、仮想現実の刺激による不安喚起に社交不安の程度が及ぼす影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度の研究では、健常大学生を協力者とし、仮想現実のシステムによる不安へ社交不安の程度が影響するかを検討していたが、十分な人数の協力者を得ることが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画に従い、次年度(H29年度)では、協力者を広く募り、実験の目的に同意を得た大学生に対し、社交不安の程度が、仮想現実のシステムのもとで惹起された不安へどのような影響をもたらすかを検討する予定である。加えて、これまでの実験結果の解析から、視線停留点についても検討することが必要であることが明らかとなった。次年度では視線停留点についても検討をすすめていくために必要な解析ソフトを購入する予定である。
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