児童生徒の心身の健康を守る取り組みの中でも、特に自殺予防に焦点を当てて、北海道教育委員会と北海道医療大学との包括連携に関する協定に基づいて設置された自殺予防教育プログラム作成検討会が複数の有識者の参加によって開催され、自殺予防教育の課題の明確化と、自殺予防教育プログラムの目標を、①援助希求的態度の育成、②心の健康の問題認識、③ストレス対処スキルの育成の3つに絞って行うことが決定し、研究代表者らはストレス対処スキルの育成に関してその基礎的、応用的な研究を深めることとなった。遠隔地を含む高校生349名(4校)を対象に、ストレス対処能力の育成に関する授業(教科「特別活動」において①楽観的に考え直す、②将来に目を向ける、③自分の生き返る、④失敗を見つめ直す、の4時間)が行われた。授業後、「ほっとプラス」と命名されたストレスに対する肯定的再評価尺度によってストレス対処能力の成長度を確かめた。いずれの学校も「楽観思考」の得点上昇に有意な変化が見られたことを特徴としていた。自暴自棄な思考をストップする「脱破局化」も変化の傾向が見られたが、統計学的に有意な変化とはいえなかった。併せて、近年,高校生の中途退学者の事由に「学業不振」が増えてきていることなどから,学習する上で直面するつまずきに適切に対処できるようになることが望まれている。そこで高校1,2年生522名を対象に学業つまずき対処方略尺度の尺度を作成した。尺度は「情報過多の整理」,「課題への直面化」,「短期目標の明確化」の3因子であり、模擬試験得点の上位者に学業つまずき対処方略の高得点者が多く含まれることや、低得点者に抑うつ傾向が強いことが明らかとなった。今後も継続する研究体制の元で、学業のつまずきへの対処能力の向上とストレスに対する肯定的再評価の向上がその後の学校生活における心身の健康管理にどう活かされるかに関する持続的な検証を行う。
|