研究課題/領域番号 |
26380943
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
木野 和代 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (30389093)
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研究分担者 |
内田 千春 共栄大学, 教育学部, 教授 (20460553)
鈴木 有美 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (00575160)
高橋 靖子 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (20467088)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多次元共感性 / 保育者 / 保護者 / 保育者特性 / 精神的健康 |
研究実績の概要 |
本研究では,保育者が共感疲労に陥ることなく,精神的に健康な職業生活を送るための共感性のあり方を,保育者自身および保護者の視点から検討する。そして,多様化する現代の保育現場で保育者に求められる共感性を育成する教育プログラムの提案を行う。 本年度は第一に,保護者が望む保育者の関わりについて,保護者への面接調査の結果を踏まえて量的調査を行った。子どもの背景にある家庭への関与については,子どもの家庭での生活習慣は気にかけてほしいものの,保護者自身の仕事や家庭生活に対しては程よい距離感を保ち,価値観の押しつけを好まない傾向などが示された。また,これらの関わり方の期待は子どもの年齢や子育て環境によっても異なっていた。 第二に,大学養成課程からの継続サンプルにおける保育職就職1年半後調査については,人数確保が困難であったが,得られた少数事例を分析した。回答者は全般に精神的健康状態が良いとはいえず,特に不調な者の共感性の下位側面の変化は,これまでの検討で共感疲労との関連において問題視されてきた被影響性と自己指向的反応において,大学1年次から上昇傾向・高止まりの傾向をみせた。なお,継続サンプルにおける就職1年半後の調査データ数の不足に対しては,広く現職保育者を対象とした調査を計画・実施した。調査データは今後分析予定である。 第三に,共感性尺度と保育者特性尺度との関連を検討した結果,上述の被影響性および自己指向的反応の高さが,行動力や社交性といった行動的積極性の低さと関連することが見いだされた。今後の共感性育成プログラム提案の参考となる成果が得られた。 これらの成果については学会報告を行った。さらに,本研究で使用している共感性尺度については,WEB調査や共感性育成プログラムでの活用の利便性を考えて短縮版を考案していたが,この短縮版尺度の検討結果について論文にまとめて公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定どおり,保護者が保育者に望む共感性や関わり方に関する調査,および,現職保育者に関する調査を実施した。また,共感疲労と関連する共感性の下位側面について,保育者特性の観点から検討を行った。共感性尺度の短縮版の検討結果については,論文にまとめて公開した。 しかしながら,現職保育者調査および保護者調査の設計と実施には検討課題が多く,想定以上の時間を要した。このため,年度内にデータ解析を充分におこなえず,共感性育成プログラム提案のための資料を整えられなかったために,プログラム提案にまでは至らなかった。以上から,やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずはこれまでに収集した各種データの解析をおこなう。また,子どもや他の対人援助職を対象とした共感性育成プログラムに関する資料収集も行う。そして,これまでのデータや資料を総合して,保育者に求められる共感性の様態を多角的に明らかにし,そのような共感性育成のための教育プログラムを提案する。学会発表や論文執筆により成果報告もおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析が遅れたため,解析結果の報告・公開と,これらを踏まえた共感性育成プログラム提案に向けた研究打ち合わせを行うことができなかった。このため,研究成果報告に関わる諸費用や打ち合わせ旅費を中心に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
まずは平成28年度までに収集した各種データの解析および成果報告をおこなう。さらに,現職保育者調査については協力園へのフィードバックを行う。また,子どもや他の対人援助職を対象とした共感性育成プログラムに関する資料収集も行い,これまでの研究成果を踏まえて,保育者のための共感性育成プログラムの提案を行う。このため,データ解析・成果公表のために必要となる物品の購入や資料請求,郵送費,業務委託,アルバイト謝金,研究打合せ・資料収集のための旅費,学会発表の旅費・参加費,論文投稿・英文校閲費等が必要となる。
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