研究課題
14種類の図形を提示し、もっともきれいと思われる箇所に1本の分割線を描くという課題を、統合失調症患者と健常者を対象に継続して実施し、データを収集した。統合失調症患者と健常者と比較検討した結果、統合失調症患者は垂直方向および水平方向ともに対称に分割する頻度が高かった(日本心理学会の自主シンポジウム「描画の心理的解釈について」にて発表)。次に、統合失調症患者44名と健常者130名における対称性選好に関する要因について精神症状と気分状態を焦点に当て検討した。一般化線形モデルによるロジスティック回帰分析を行った結果、統合失調症患者において対称生選好に有意と関連した要因は、統合失調症患者の精神症状を評価するPANSSの陰性得点の低さ、総合精神病理得点の高さであり、陽性得点の低さは関連傾向が認められた。一方、健常者において対称生選好と有意に関連した要因は、気分を測定するPOMSの怒り・敵意の低さであり、混乱の高さは関連傾向が認められた(平成30年度日本心理学会で発表予定)。最後に、健常者を対象に、対称性選好と眼球運動との関係について検討を試みた。提示した図形に対する注視の移動距離、各領域ごとの注視回数や注視時間と対称性選好との関係について検討した。その結果、注視の移動距離が長い人は非対称に分割線を描く傾向がある可能性が示唆された。しかし、データ数が少ないことから、今後の検討が望まれる。以上より、統合失調症患者は健常者と比べて対称性を選好し、それは精神症状、認知機能障害や注意障害などの認知障害と関連することが示唆された。一方、健常者の対称性選好は怒り・敵意の低さや混乱の高さといった気分が関連することが示唆された。
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