研究課題/領域番号 |
26380953
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
西村 馨 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (70302635)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グループ療法 / 思春期 / 教師研修 / 不登校 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
①グループ:男子グループは平成26年度中に継続を表明した5名に加え、5月に1年生1名、9月にさらに1年生2名(特別支援学級利用者)を加えた。途中1名の脱落者を出したが、3年生3名は無事卒業を迎え、それぞれ希望の高校に進学を決めた。とりわけ発達障害、情緒障害を抱え不登校だった2名が情緒的な成長を示し、進路を決めることができたことは大きい。女子グループは、男子グループの形式、ネットワークを基盤として募集し、4名(全員特別支援学級利用者。1年生2名、2年生2名)の参加者を得て9月から開始し、年度を終了した。内1名はグループリーダーによる個人面接を補助的に併用することになった。全員、次年度への継続参加を希望した。それぞれに、活動と対話を通してグループ凝集性を高め、そのなかで自己表現と情緒交流を深めるプロセスを観察することができた。 それぞれのデータは順次蓄積され、転回点となる場面や技法についての分析をおこなってきている。男女グループそれぞれについて、研究所内での事例検討を数度おこなった。 ②教師研修:研修生(1名)は、前年度から継続してH27年度も男子グループに月に1~3回のペースで参加し、研修記録を蓄積した。新たな教師研修生の希望者はあったが、グループ構成の都合上見送り、初心のスクールカウンセラー2名を研修生として女子グループを担当することとなった。 ③成果発表:男子グループの形成期・展開期までのプロセスについては9月の国際集団精神療法・集団過程学会(IAGP)、日本心理臨床学会秋季大会で発表した。また3年生が卒業していくプロセスについてはH28年2月のアメリカ集団精神療法学会、3月の日本集団精神療法学会で発表した。日本集団精神療法学会での発表は、座長の推薦を受け、学会誌での刊行が決まっている。一方女子グループについては、担当者を筆頭演者として日本集団精神療法学会で、その初期過程について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
◇進行している点:①予定通り、男女各1グループを開始することができ、大きな問題もなく維持でき、それぞれに治療的成果を示している。データ収集も順調である。②また教師研修生も継続参加し、研修の成果を見せて、グループメンバーへの理解を深め、適度な距離を保ちつつ、柔軟に関わって、研修の成果を見せ始めている。こちらのデータ収集もまずは順調である。③成果の発表についても、開始期、展開期、卒業期のグループプロセス、メンバー理解のポイント、技法のポイントを学会で発表し、それらについての刊行予定も決まっている。 ◇問題点:関係性を深めるというグループの目標のために、当初予想していた以上に、技法的要因よりも、関わるリーダー自身の反応性、内省能力が重要な役割を果たしていることが見出された。また、グループを効果的なものにするためには、グループ以外の個人面接、家族への介入などが必要であることが一層明確になってきた。その方針の基盤を検討する必要がある。そのため、「グループセラピーマニュアル」の構成準備に十分な検討を要することとなっている。また教師研修に関しては、期待していた人数を集めることができず、研修過程における課題や、それを解決していくためのポイントについては、十分に一般化できるものにはなりにくいと思われる。研修過程のデータ分析については今だ途上にあるが、むしろ、上述の通りそこで見られた過程に興味深いものがあり、それを十分理解していく必要を感じている。また、心理臨床の基礎訓練を終えたスクールカウンセラーのための研修についても、技法上の課題、自分自身の課題が明瞭化してきた。これらの研修過程の分析を十分に行うことで、マニュアルの基盤、骨組みとなる部分を十分に固めていく意味があると考えている。その見通しはつきつつあり、次年度での完成は可能であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
①思春期グループ:新規参加者を随時導入しつつプログラムを継続し、データを蓄積していく。これまでのデータ分析分とも合わせてプロセス展開をまとめていき、日本集団精神療法学会誌、およびICU高等臨床心理学研究所研究誌に刊行していく。また、そのプロセス展開に寄与した技法についての原理をまとめ、技法論・セラピストの役割を平成28年7月に開催されるInternational Congress of Psychology 2016(横浜市)で発表する。 ②教師研修プログラムの成果をまとめ、トレーニングプログラムとしての枠組みを明瞭化する。それらをふまえて、「思春期グループセラピーマニュアル:基礎編」として来年度の刊行を目指す。中核部分・概要に関しては本学の研究所ホームページに掲載し、公開する予定である。 ③研究成果の公開活動の一環として、国際レベルでの研究交流会を7月に実施する。米国における思春期青年期精神医療・心理療法の重要拠点であるAustin Riggs CenterのAssociate Clinical DirectorであるDr. Eric Plakunを招き、重篤なパーソナリティ障害を持つ青年への心理力動的心理療法についての講演をおこなっていただいた後に、わが国の思春期・青年期心理療法についての専門家を交えた、本事例を含めたさまざまな思春期心理療法・心理社会的援助について議論の場を持ち、本プログラムの意義を検討するとともにわが国の課題を明確にしていく。また、3月には、本プログラムの運営にご協力いただいた地域の教育(学校、教育相談、教育行政)関係者、心理学や精神医学の専門家を招いて、成果発表・検討と研究交流の機会を持つ予定である。これらについては、年度内の刊行あるいはホームページ上での概要公表が望ましいが、場合によっては年度を越えて実施することになるかとも思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度開催のInternational Congress of Psychology 2016の参加費を振り込んだが、その処理手続きが遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記参加費として使用する。
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