研究課題/領域番号 |
26380955
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
吉畑 博代 上智大学, 外国語学研究科, 教授 (20280208)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 失語症 / コミュニケーション / 評価法 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,引き続き文献研究を進めるとともに,失語症者のための日常コミュニケーション自覚度評価法の試案を作成することを目的とした。 本研究を進める上で,新たに参考になる質問紙として,Hilariら(2003)のStroke and Aphasia Quality of Life Scale-39(SAQOL-39)をもとに,Kamiyaら(2015)が,日本の失語症者向けに作成したSAQOL-39-Jがあることが見出された。この質問紙は,計39項目の質問から成り立っているが,コミュニケーションに関する質問は7項目となっている。またイギリスで開発された失語症検査Comprehensive Aphasia Test(CAT,2004)には,認知機能や言語機能に関する評価項目に加えて,失語症当事者の気持ちを伺う質問紙も含まれている。研究用としてはDisability Questionnaire(DQ)という質問紙を用いるが,臨床用としてはAphasia Impact Questionnaire(AIQ)を用いることが推奨されるということが明らかになった。臨床に有用なAIQ(2013)には,各質問に対応した絵が含まれ,また5段階で解答する選択肢部分には,人の顔(表情)とジェスチャーが描かれている。これらを日本の失語症者数名に予備的に実施したところ,質問に対応する絵がわかりにくい,選択肢の表情やジェスチャーが日本人には受け入れにくいなどの結果が見出された。このような予備的結果をともに,さらに質問内容,質問に対応する絵,選択肢の表情とジェスチャーに関して,健常高齢者および失語症者を対象に,了解しやすさや妥当性を検証し,日本の失語症者が使用可能な質問紙を作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究として,CATにDisability Questionnaire(DQ)が含まれていることはすぐに明らかになったが,Aphasia Impact Questionnaire(AIQ)の位置づけや意義を調べることに時間がかかった。さらに失語症者に予備的に実施するまでにも時間を要し,日本の失語症者が使いやすいように質問項目を整理・検討することができなかった。 今後,早急に質問項目を整理し,利用する絵の妥当性も調査することによって,日本の失語症者が利用可能な質問紙作成へと進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は質問項目を整理すること,また導入する絵の妥当性・適切さについて健常高齢者や言語聴覚士に調査することを行う。この調査結果を経て,「日常コミュニケーション自覚度評価法」試案としてとりまとめ,その後,失語症者に実施する。その結果,修正が必要な箇所等が見出された場合には,加筆修正を行い,「日常コミュニケーション自覚度評価法」としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進行の遅れにより,研究協力者への研究補助としての人件費・謝金を十分に使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後,調査研究を進めるとともに,専門的知識の提供者や研究協力者に,人件費や謝金を支出する予定である。さらに情報収集と,本研究成果を学会に発表するための旅費を使用する予定である。
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