研究課題/領域番号 |
26380955
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
吉畑 博代 上智大学, 言語科学研究科, 教授 (20280208)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 失語症 / コミュニケーション / 評価法 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本年度は,文献研究を行うとともに,失語症者のための日常コミュニケーション自覚度評価法の試案を作成した。 試案作成にあたり,参考にした既存質問紙は,Hilariら(2003)のStroke and Aphasia Quality of Life Scale-39(SAQOL-39)や,イギリスで開発された失語症検査Comprehensive Aphasia Test(CAT,2004)に含まれるDisability Qeustionnaire(DQ)である。またCATの筆頭開発者であるSwinburnが,臨床により有用な質問紙として作成したAphaisa Impact Questionnaire(AIQ,2013)がある。これらの中から,AIQの質問内容や質問方法が,日本の失語症者になじみやすいと思われた。そのためSwinburnらと連絡をとり,AIQの考え方に沿って「日常コミュニケーション自覚度評価法」試案をまとめた。 AIQには各質問に対応したイラストが添えられている。本評価法でも,質問内容をわかりやすくするために,イラストを添えることにし,各質問に対応するイラストの検討も行った。 さらに作成した試案を,重症度の異なる2名の失語症者に実施した結果,重度失語症者にとっても,回答可能な評価法であることが確認できた。また失語症当事者の,言語機能やコミュニケーション面に対する思い,参加面に対する考えを知ることができた。リハビリテーションの中で,本質問紙を実施することで,失語症当事者の思いを把握できる評価法であることが見出された。 AIQが開発されたイギリスで,失語症当事者が主体的に運営・参加する「国際失語連合」第1回大会にも参加した。失語症当事者の社会参加に対する思いや困りごとを把握出来たことは,本評価法の開発を進める上で有益であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本評価法に使用する質問文自体は,ほぼ確定することができた。しかしながら,各質問に対応するイラストを,十分に検討することができなかった。健常者や失語症者を対象に,わかりにくいイラスト・わかりやすいイラストを調査することはできたが,各質問文に対応したイラストを最終決定するまでには至らなかった。 今後早急に,各質問文に対応するイラストのイメージを検討する予定である。 また年度末近い3月上旬に,AIQが作成されたイギリスで開催された「国際失語連合」第1回大会に参加した。その大会での情報収集結果を,本研究の進展に役立てる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
質問文には,当事者に「退屈」や「自信」などの心理面を問う項目も含まれる。このような質問文に対応するイラストを定めることは,難しい側面があるが,まず各質問文に対応するイラストのイメージを定めた上で,実際に,イラストとして描写する計画である。 その上で,「国際失語連合」第1回大会で行った情報収集結果も参考にして,「失語症者のための日常コミュニケーション自覚度評価法」としてまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年3月上旬にイギリス出張を行い,情報収集を実施した。その出張分の領収書などの手配が間に合わなかったため,現在処理中である。また,本評価法に沿えるイラストの検討を詳細に行うことができなかったため,研究協力者の研究補助としての人件費・謝金を十分に使用することができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後,イラスト作成を含めて,本評価法を完成させるために,専門的知識の提供者や研究協力者に,人件費や謝金を支出する予定である。
|