本研究は、生殖医療(不妊治療)によって妊娠、出産に至った当事者を対象とした面接調査を縦断的に実施し、妊娠前(不妊治療中)から妊娠、出産、育児期にわたる当事者の心理過程を、夫婦関係や親子関係の実際も含めて明らかにしようとするものである。今年度はその5年目にあたる。 初年度(平成26年度)は、先行研究の概観を行い、筆者の臨床心理士としての経験事例から得られた示唆も併せて、妥当な質問票の検討を行った。2年目(平成27年度)は、引き続き先行研究の概観を行うとともに、研究協力施設との調整や手続きの検討等を行った。3年目(平成28年度)は、引き続き先行研究の概観を行い、分析方法の検討ならびに予備的検討を行った。4年目(平成29年度)は、引き続き先行研究の概観を行うとともに、予備的検討を継続した。 5年目にあたる今年度は、不妊という経験について夫婦関係の発達という視点や家族関係とセクシュアリティとの関連という視点から事例を通して検討を行った。その結果、夫婦間の合意がたとえ妥協的なものであったとしても、不妊治療を進めるためには必要な意思決定過程であり、これも夫婦関係の発達の1つの姿であるととらえられる可能性のあることが示唆された。
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