本研究は頭部外傷者の表情認知障害の評価方法とリハビリテーション効果について行動及び脳活動指標の両側面から検討した.行動課題において,頭部外傷者は「喜び」以外の表情に対する表情認知閾が健常群より上昇し,このような表情認知障害は,記憶,遂行機能,社会的行動の各課題の成績と有意に相関した.また,頭部外傷者では,事象関連電位(ERP)における顔特異的効果(N170効果)が認められず,初期の顔知覚に問題が生じている可能性が示された.一方,表情認知障害に対する集中的な介入の結果,行動尺度上で患者の表情認知障害の改善が生じただけでなく,顔特異的ERP成分(N170)のふるまいにおいても訓練効果が示唆された.
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