研究課題/領域番号 |
26380960
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
松永 美希 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (60399160)
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研究分担者 |
三浦 正江 東京家政大学, 人文学部, 教授 (00330134)
中村 菜々子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (80350437) [辞退]
古谷 嘉一郎 北海学園大学, 経営学部, 講師 (80461309)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教師 / ストレス / リアリティ・ショック / ソーシャルキャピタル / 心理学的介入 / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
平成29年度は,新任教師のソーシャルキャピタル,主に管理職や同僚,指導担当者からの支援について経時的に調査することと,個人内要因としての完璧主義傾向と新任教師のリアリティ・ショックやメンタルヘルスとの関連性について検討することを目的とした。 ソーシャルキャピタルとしての職場の雰囲気については,2学期以降に校内メンバーでアイデアを出し合うといったコミュニケーション量の増加が確認された。一方で,職場外の人との関係については,2学期に一時的に接触頻度やサポート量が減少することが確認された。 職場の管理職および先輩教師からのソーシャルサポートとリアリティ・ショックの関連を検討したところ,いずれのソーシャルサポートもリアリティ・ショックの「職場の人間関係」,「多忙」と負の相関関係が認められた(管理職:「職場の人間関係」r=-.52,「多忙」r=-.25; 先輩教師:「職場の人間関係」r=-.50,「多忙」r=-.21)。それ以外のリアリティ・ショック(「経験不足」と「生徒・保護者との関係」)との間には,有意な相関関係は認められなかった。 完璧主義傾向とリアリティ・ショックおよびメンタルヘルスの関連を検討したところ,完璧主義のなかでも「ミスを過度に気にする傾向(CM)」「自分の行動に漠然とした疑いを持つ傾向(D)」とリアリティ・ショックの4因子との関連がそれぞれ有意であった(CM:r=.25~.44, p<.01; D:r=.18~.24, p<.05)。また完璧主義のこれらの2因子は,抑うつや不安といったメンタルヘルス不調との関連も有意であった(CM:r=.50,p<.01; D:r=.22,p<.01)。 今後はさらにサンプル数を増やして,ソーシャルキャピタルが個人内要因を介して,リアリティ・ショックやメンタルヘルスに及ぼす影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は産休・育休のために研究中断が余儀なくされたため,当初よりも1年遅れで計画は進んでいる。しかし平成29年度からは計画通りに,研究3となる新任教師のソーシャルキャピタルがリアリティ・ショックやメンタルヘルスに及ぼす影響に関する研究調査に着手できており,計画としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き,新任教師のソーシャル・キャピタルがリアリティ・ショックやメンタルヘルスに与える影響を量的に検討する。そのため,引き続き平成29年度に研究に協力してもらった自治体に協力依頼を行う予定である。また新任教師のリアリティ・ショックを対象としたメンタルヘルス研修プログラムに関して,他の対人援助職を対象に心理的介入や予防的介入をおこなっている研究者と共同して,プログラムを紹介する書籍の企画を進める予定である(研究1)。さらに,管理職を対象とした面接調査において得られたデータの分析を進めて,管理職の理解するリアリティ・ショックとその対処に関する知見をまとめる予定である(研究2)。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に産休・育休のために研究中断となり,研究が1年遅れで進行している。そのため,延長の手続きを行い,平成30年度に残額を使用して,研究3である新任教師のソーシャル・キャピタルが個人内要因を介してリアリティ・ショックやメンタルヘルスに与える影響について量的検討を引き続き行う。調査の実施にあたり,調査用紙の郵送代,データ整理のためのアルバイト雇用への研究費使用を予定している。また,研究2までの成果を発表するため,日本心理学会や日本認知・行動療法学会等に参加し,研究発表を行う予定である。その旅費として使用予定である。
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