研究実績の概要 |
H30年度は,就学移行期における子どものQOLの発達に関わる要因について主として母親の自尊感情および養育態度に焦点をあてた検討を行った。 調査対象者は107家庭(男子54名,女子53名),平均月齢は年長時76.82ヶ月(SD=3.14),小学1年生時(就学後)88.83ヶ月(SD=3.36)であった。対象児が年長時の母親の平均年齢は38.59歳(SD=4.54)であった。 分析に用いた調査内容は次の3点であった。1.子どものQOL測定尺度:KINDLの幼児版であるKiddy-KINDLR Parents ’version(Ravens- Sieberer & Bullinger,1998)の日本語版(根本・柴田・松嵜・古荘,2013)を使用した。2.親の自尊感情 :Messer & Harter(1986)が作成したManual for the Adult Self-Perception profileのGlobal Self Worthの項目を原著者の許可を得て邦訳しバックトランスレーション後に使用した。3.親の養育態度:養育態度については、「温かさ、権威的、放任的、体罰、主体性尊重」の5つの側面から評価した。 就学前後における子どものQOLの発達的変化とそれに関わる要因を検討するため,共分散構造分析によるパス解析を実施した。その結果,就学前期における母親の自尊感情と子どもの主体性を尊重する養育態度が就学後の子どものQOLに関連していることが示唆された。 以上の結果を踏まえ,本研究の成果を「小1プロブレム」の予防に関わる諸要因(子どもの自己有能感・社会的受容感の発達に関わる環境要因等)について検討する際の基礎的資料として用いる可能性について言及した。
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