研究課題/領域番号 |
26380968
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
谷向 みつえ 関西福祉科学大学, 心理科学部, 教授 (20352982)
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研究分担者 |
赤澤 淳子 福山大学, 人間文化学部, 教授 (90291880)
桂田 恵美子 関西学院大学, 文学部, 教授 (90291989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アタッチメント表象 / 児童養護施設 / 児童期 / 縦断調査 / ドールプレイ / 心理的ケア |
研究実績の概要 |
平成29年度はAttachment Doll Play Assessment(George & Solomon, 1990, 1996, 2000;以下ADPA )の第2次調査の査定を有資格の桂田が行い、児童養護施設入所児童のアタッチメント・スタイルが2年間でどのように変化するか検討した。なお、ADPA査定結果の信頼性検証のために有資格査定者間の一致率は83.0%であった。また第1・2次調査共に協力してくれた児童16名の担当ケアワーカーに対して赤澤と谷向が、対象児の生活環境や背景、各種心理的ケアを含めた特定の大人との交流、2年間のライフイベント等のバックグラウンドに関する聞き取り調査(BG調査)、並びに幼児用レジリエンス尺度(長尾・芝崎・山崎,2008)、子ども用トラウマ症状チェックリスト(TSCC-A;西澤,2009)、子どもの行動チェックリスト(CBCL;井澗・上林・中田ほか,2001)への記入を求め、アタッチメント・スタイルの変化に与える影響について検討した。 第1次調査(Time1)から第2次調査(Time2)までのADPAによるアタッチメント・タイプの変化について検討したところ、異なるタイプへと変化した児童が11名、同じタイプで変化なしの児童が5名であった。特に安定型(B)へ変化した児童が多く8名に増え、その内3名はTime1でもBであった。一方、Time1で無秩序型(D)であった5名は全員が変化したが、Time2で新たに2名がDと査定された。更にアタッチメントを安定(B)、不安定(A/C)、未組織(D)の3段階に分け、Time1からTime2への移行を分類したところ改善7名、維持6名、不安定化3名であった。 アタッチメントの変化に影響する要因について「心理的ケア」の有無との関連が見出されており、今後、BG調査との関連についてさらに分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第1次調査の訪問調査に際し、研究者と施設側の調整に時間を要したことから遅れが生じ、第2次調査にまで引き続いている。また、研究発表を行うための調整に難航している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究の推進は、縦断研究の分析を行い一連の研究成果について学会や学術雑誌等に発表することが課題となる。その方策として先ず絵画愛情関係テスト(PART;高橋,2002)による調査研究から明らかになった児童養護施設入所児童の対人関係のパターンは在宅児童とは違う傾向を示すため、新たな分類をつくることが課題となる。次に、その分類も含めてアタッチメント・スタイルとの関連や縦断的変化の要因について分析を加えることが2つめの課題である。 しかしながら第1次調査で研究協力してくれた児童の施設退所、第2次調査への協力の拒否等のために、2時点の調査データが揃っている対象者数が少ないことが分析上の足枷となっている。今後の研究推進の方策として質的分析を取り入れると共に、対象者数の追加も視野に入れることを検討する。これらの研究成果を総括することで、施設入所児童のアタッチメント表象の再構築に寄与する手立てが実践現場に還元されるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査研究の進捗がやや遅れているのに合わせて研究成果の発表も遅れている。そのため旅費等の使用が次年度へと繰り越された。
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