研究実績の概要 |
われわれは,低迷するマンモグラフィ検診への受診行動を促進するため,検診未受診の中高年期女性(40歳~69歳:1,033名)を対象に,①マンモグラフィ検診受診行動に影響する個人差変数である「病気認知(乳がんをどの程度脅威なものと感じているか)」を測定する尺度(Brief IPQ-JBC)の再検討,②「病気認知」のレベルによって対象者を分類し,3種類のテーラーメイドパンフレットを用いた介入効果研究(アウトカム:マンモグラフィ検診受診意図),③同様の介入効果研究(アウトカム:介入後1年間におけるマンモグラフィ検診受診の有無)という3つのステップで研究をおこなった。 その結果,十分な信頼性・妥当性を有する尺度が作成された。また,直後のマンモグラフィ検診受診意図をアウトカムとした研究では,乳がんに対する脅威の程度が中程度の対象者において,パンフレット介入が直後のマンモグラフィ検診受診意図を上昇させること,その際,乳がんに対する不安軽減を意図したパンフレットにおいてその傾向が顕著であることを見出した。一方で,乳がんに対する脅威がかなり低い(平均‐1.5SD以下)対象者では,パンフレットによる受診意図向上は認められず,逆に,乳がんに対する不安喚起を意図したパンフレットによって受診意図は低下した。最後に,乳がんに対する脅威がかなり高い対象者(平均+1.5SD以上)では,不安喚起や不安軽減を意図しないニュートラルな内容のパンフレット介入によってのみ,マンモグラフィ検診受診意図の上昇が示唆された。 最後に,最終調査に応じた518名を対象者とした介入後1年間におけるマンモグラフィ検診受診率をアウトカムとした研究では,想定された介入の効果は全く認められず(全体の受診者数26名:4.0%),検診未受診者への効果的な介入法の再検討,検診未受診者の心理特性のさらなる検証などが余儀なくされた。
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