研究課題/領域番号 |
26380977
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研究機関 | 鹿児島純心女子大学 |
研究代表者 |
餅原 尚子 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 教授 (70352474)
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研究分担者 |
久留 一郎 鹿児島純心女子大学大学院, 人間科学研究科, 教授 (40024004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 惨事体験 / 目撃体験 / 裁判員志度 / ストレス / PTSD(外傷後ストレス障害) / CIS(惨事ストレス) / 臨床心理査定 / 臨床心理面接 |
研究実績の概要 |
平成5年以降の臨床心理査定、臨床心理面接を実施したPTSDの事例(被害者)について、惨事の直接体験(目撃)、間接体験による主観的意味づけとストレスの程度、回復過程について分析した(新規の事例も含めて継続分析中)。 画像を見ることによるストレス状況を把握するために、48枚のカラー画像(擦過傷、擦過創、挫傷、挫創、挫滅創、切創、裂創、割創、銃創、刺創、杙創、咬創)を軽症から重傷までの5段階に分類した。その画像を2名の男性警察官、1名の女性警察官に呈示し、犯罪被害の証拠写真に近いものを選択してもらった。さらに、あらかじめ研究代表者と研究分担者で選択した5枚のカラー画像を、「絵画風」「白黒」に加工し、再度、呈示した。その結果、カラー画像より、白黒画像の方が、インパクトは少なく、また、積極的に細部まで画像を見ることができることがわかった。次年度は、一般人を対象に、個別調査をする予定である。 平成25年に実施した裁判員制度に関するアンケート調査(女子大学生171名、男子大学生24名、性別不明2名、合計197名)に、今年度は、新たに男子大学生78名を加え、同一のアンケート調査を実施した。その結果(対象者合計273名 性別不明2名を除く)、女性は、男性よりも「自分の名前」「自分の住所」「自分の生い立ち」は知られたくないと回答する傾向にあった(p<0.01)。また、裁判員の男女比について、女性の方が男性よりも「男女比は同等がよい」と回答する傾向にあった。救援者のストレスに関する研究(科学研究費:餅原、2006)のデータについては、「ひどい遺体に携わった」者のデータについて分析中である。 その他、裁判所職員のメンタルヘルス講演とカウンセリングの依頼があり実施し、情報収集をした。さらに、日本ロールシャッハ学会発行の「ロールシャッハ研究第19巻」への投稿論文(レフリー付き)が平成27年3月30日付けで採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
惨事体験・目撃によるストレスとその回復過程については、新規の事例も含めて継続して分析中である。 また、凄惨な画像を見ることによるストレスの調査について、平成26年度中に予備調査ができた。この結果をもとに、平成27年度以降に本調査をすることが可能になった。 さらに、救援者のストレスに関する研究(科学研究費:餅原、2006)のデータについて、「ひどい遺体に携わった」者のデータについて分析した結果をもとに、平成27年度に、救援者の感情労働と惨事ストレス(CIS)、PTSD(外傷後ストレス障害)に関する調査を実施するための質問項目を検討することができた。 以上の理由から、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に引き続き、PTSDの事例収集、分析を継続する。分析の視点として、実際に惨事に直面(目撃)した場合、間接的に体験した場合の主観的意味づけと、ストレスの程度、そして、その回復過程について明らかにし、予後の良好、不良の要因を見出す。 救援者を対象に、惨事体験・目撃のありよう、元々のパーソナリティ、ストレス状況(PTSD、CIS)、感情労働、PTG(Posttraumatic Growth:外傷後成長)について、アンケート調査(あるいはインタビュー調査)を実施する。調査は、パーソナリティ・インベントリー、惨事ストレス尺度、PTSDのDSM-5修正版等による尺度、感情労働尺度、日本語版外傷後成長(PTG)尺度等を検討する。対象者については、自衛隊所属の臨床心理士と、県警被害者支援室職員、県消防学校等を研究協力者として指定し、調査協力者を募る。データの統計処理については、大学院生等の研究協力者に依頼する。 平成26年度に実施した、画像を見ることによるストレスについて、裁判員になりうる一般成人を対象に調査した結果をもとに考察する。また、海外での陪審制度、参審制度による陪審員や参審員等へのメンタルヘルス対策の現状について視察、情報交換を行い、本研究結果を踏まえた学術交流、調査等を実施する。また、1)~3)の結果について発表し、学術交流、情報交換等を実施し、我が国に適切な裁判のありようについて考察する。 以上の結果をもとに、惨事体験・目撃によってどのようなストレス反応が生じ、感情労働となるのか、そして、PTGを促進する要因等についてのガイドラインを作成し、関係機関へも配布する。さらに、得られた結果をとりまとめ、その成果を学会等で積極的に発表していく。また、我が国の裁判員裁判のメンタルヘルス対策にも貢献できるよう、証拠書類等の呈示のありようなど提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、画像処理(カラー写真を白黒写真と絵画風写真に処理)にかかる経費を計上していたが、インターネット等の利用によって画像処理をしても研究の目的に支障がないことがわかり、無料で処理することができ、残金が生じた。また、アンケート調査の分析(統計処理)に予想以上の時間がかかり、次年度に繰り越すことになってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じたことで、新しい統計ソフト購入、データ分析による謝金、調査費用として計上し、今後の研究をより潤滑にすすめることができる。
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