研究課題/領域番号 |
26380977
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研究機関 | 鹿児島純心女子大学 |
研究代表者 |
餅原 尚子 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 教授 (70352474)
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研究分担者 |
久留 一郎 鹿児島純心女子大学, 人間科学研究科, 教授 (40024004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 惨事ストレス(CIS) / 心的外傷後ストレス障害(PTSD) / 感情労働 / 外傷後成長(PTG) / 臨床心理面接 / 惨事体験・目撃 |
研究実績の概要 |
本研究は、凄惨な場面に直面する「惨事体験・目撃」のストレス(PTSD:心的外傷後ストレス障害、CIS:惨事ストレス)と感情労働について明らかにするものである。 1)平成26年度に引き続き、PTSDの事例収集、分析を継続した。平成27年度は、継続2ケース、新規13ケースであった。その中の殺人、DVの目撃した子どものPTSDについては、裁判等の経過をみながら、臨床心理面接を継続している。火災(焼死1名)の被災者については、臨床心理面接後の予後について経過観察中である。 2)裁判員裁判(性暴力犯罪)に関する大学生(男性102名、女性171名、合計273名)の意識調査(2013年11月、2015年1月実施)において分析した結果、「性暴力犯罪を裁判員裁判から除外するかどうか」にかかわらず、「証拠はすべて見ておいた方が良い」と回答 している人が多かった。 3)救援者を対象にした調査について、惨事体験・目撃体験、元々のパーソナリティ、ストレス状況(PTSD、CIS)、感情労働、PTG(Posttraumatic Growth:外傷後成長)に関する調査尺度を検討した。特に感情労働については、今回の研究テーマにおいて適切なものが少なく、現在、関谷・湯川(2014)の感情労働尺度日本語版(ELS-J)を検討している。平成27年度は、調査に向けて、マークシート式調査用紙、データ分析ソフト等を購入し、分析方法の検討と試分析を行った。対象者については、検死等を担当した経験のある警察官2名にインタビューを実施し、平成28年度調査実施に向けて準備をすることができた。 4)平成28年度は、諸外国の裁判(陪審制度、参審制度)による陪審員、参審員、被害者、目撃者のストレスに関する情報収集を行う予定であるが、パリ同時多発テロ事件に鑑み、視察、調査等可能な国を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究最終年度(平成28年度)に向けて、アンケート調査実施のための準備(調査対象者、尺度等の検討)をすることができた。 諸外国の裁判(陪審制度、参審制度)による陪審員、参審員、被害者、目撃者のストレスに関する情報収集を行う予定であるが、パリ同時多発テロ事件の発生により、当初予定していた、フランス(参審制度)とスペイン(陪審制度)の他、危険度の低い国での視察、調査等を検討せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
1)平成26年度、平成27年度に引き続き、PTSD事例の継続ケース、新規ケースについて分析した結果をもとに、惨事に直面(目撃)等によるストレスと回復過程について考察する。 2)裁判員等が目にするような画像を見ることによるストレスについて、インタビュー調査を実施を実施し、考察する。 3)救援者を対象に、「感情労働」と「ストレス(PTSD、CIS)」、「PTG(外傷後成長)」関する調査を実施し、惨事体験・目撃によるストレスの予防・緩和要因とその支援のありようについ て考察する。 4)海外での陪審制度、参審制度による陪審員、参審員等のメンタルヘルス対策の現状について視察、情報交換を行い、本研究結果を踏まえた学術交流、調査等を実施する。5)1)~4)の結果をもとに、惨事体験・目撃によってどのようなストレス反応が生じ、感情労働となるのか、そして、PTGを促進する要因等についてのガイドラインを作成し、関係機関へ配布する。さらに、得られた結果をとりまとめ、その成果を学会等で積極的に発表していく。また、わが国の裁判員裁判員のメンタルヘルス大切にも貢献できるよう、証拠書類等の呈示のありようなど提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成27年度に救援者を対象にした調査を実施する予定であったが、尺度(特に「感情労働」に関する尺度)の収集(国内外)に時間を要し、実施することができず、次年度に繰り越すことになってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じたことで、アンケート用紙(マークシート式)、封筒、送料、データ分析による謝金等に計上し、研究目的を果たすことができる。
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