平成27年度に行ってきた研究のデータを追加し拡張するため、諸認知と視空間的な注意範囲の関係性を、乳幼児や成人を主な対象者として、記憶、言語、視認知、視知覚等、複数の認知活動に焦点をあて、発達的視点から検討を行うとともに、成果のまとめを行った。以下で順に報告する。 第一に、27年度に続き、乳児と1歳台の幼児を対象に、新奇単語と旧単語への視覚的注意の向け方と時間経過の関係に関するデータを収集し、他の音声も刺激に加え検討を行った結果、27年度分のデータから示唆されていた傾向が一部支持される形で、単語音声自体に対する一貫した注意反応が乳児期からみられることが示唆されたが、新奇単語の認知には個人差が大きい点も示唆された。この成果の一部については、国際学会で公表した。第二に、幼児を対象とした、視認知や行動認知、言語発達の関係性に関するデータ収集が一定数に達したため分析し結果をまとめた。第三に、これらと併行して、幅広い年代を対象に探索的に行ってきた、記憶課題による、注意の向け方やその後の記憶への残り方に関するデータを補足し、成果としてまとめた。その成果の一部は、学会で発表するとともに、論文で公表するに至った。第四に、成人を対象とした実験では、視空間的注意の時間的変遷と特定対象への滞留に関する27年度の成果にデータを追加するとともに、空間的な注意の分解能及び空間的分散・統合に関する成果をまとめた。これらの成果の一部は、査読有り学術論文にまとめて投稿した。 最終年度として、研究代表者と研究分担者により、成果の整理と議論がなされ、以上のとおり、一定以上の成果としてまとめ公表できた。
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